M&Aによる会社売却を決意するも、なかなか買手が見つからないケースが世の中にはたくさんある。なぜ、売れないのか? よく問題になる項目について述べるとともに、その対策方法について解説したい。

問題1「手遅れ感」
問題2「オーナーが数字に弱い」
問題3「名義株がある」

M&Aによる売却をオーナーが決断するのが遅いケース。収益力の低下や慢性的な借入過多により、買手が付かないケースがこれにあたる。実は、スモールM&Aの世界では「手遅れ」が理由で売れないケースが一番多いという印象がある。

【対策1】まず単年度黒字化、浪波節はNG

まずは、単年度での黒字を目指す。基本的には直近3期分の決算書が企業価値を考えるベースとなるため、業績が徐々に良化しているという姿を数字で表すことが重要となる。とにかく赤字が減少してきている、あるいは直近は黒字で今後、業績の回復が見込まれる、といったプラス材料を買手に示さなければ、いつまでたっても譲受先は現れない。これが厳しい現実であろう。

これも中小企業オーナーに多いケース。仕事大好き社長さん、あるいは完全なる職人気質のオーナーは、実は自社の決算書の数字について把握できていないケースも多々ある。売手オーナーの浪花節を理解してくれて、それにお金を出してくれる買手企業は100%ない。

買手にとってはM&Aは投資の一つであり、ある程度は経済合理性で納得あるいは説明できないと手を出せないのである。売手と買手は「利益相反」の関係にあることからも数字や計数による説明はマストである。

【対策2】顧問税理士に教えを乞うべし

顧問税理士に教えてもらうのが早道。金融機関関係者でも可。月次の試算表を用いて収益や資産・負債内容について話し合うのが最も効果的。今さら教えてもらうのが恥ずかしい…と考えていても時間だけは確実に過ぎていく。

社歴が長い会社に多く、業績が良い会社であれば潜在的な株価も高くなっており、話がさらにややこしくなるケースも多々ある。名義人が社長の知人であることが多く、すぐに解決できないこともM&Aを阻害する要因となり得る。

【対策3】誰が実質的な所有者かを証明する

誰が実質的な株主か、を証明するための資料をいかに多く集められるかがポイントになる。名義人となってもらっていた人から、書面で「現在の株主としての地位は名義人であり、実質的な所有者ではない」という趣旨を記載した書面を残しておく必要があります。

 こうしてみると、M&Aのためでもあり、実は健全な会社経営のための要件のようにも思える。御社の場合はどうか。M&Aのための準備も、実は健全な会社経営の積み重ねの一つなのかもしれない。

文:Antribe社長・小林伸行(M&Aアドバイザー)