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法律・マネー

クロスボーダーM&A締結の際に選ばれている「表明保証保険」とは

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マーシュブローカージャパン株式会社 羽田野 順氏

クロスボーダーM&Aにおいて近年重要視されている「表明保証(Warranty&Indemnity;W&I)保険」。これまで国内企業における積極的な活用事例は多くはなかったが、ここ3~4年でかなり浸透してきたという。その概要と今後の展開について、マーシュブローカージャパン株式会社の羽田野 順氏に伺った。

PE(プライベート・エクイティ)ファンドを中心に利用されてきた「表明保証保険」とは

――表明保証保険の概要について教えてください。

 「表明保証保険」の中でも主に利用される買主用表明保証保険は、株式譲渡契約書(Stock Purchase Agreement;SPA)¹等において、売主が買主に対象会社の事業状況、財務・法務等の事項に関して真実かつ正確だという事を表明し、その内容を保証する表明保証条項について、表明保証違反があった場合の買主が被る損失を補償する保険になります。 
 企業買収によって買主に損失が生じた場合、エスクローに預託された資金で補てんをするなどの方法がありますが、特にPEファンドが売主である場合には早期にファンドをクローズしたいというニーズがあります。そうした中で、クリーンなエグジット2を達成する戦略のひとつとして選ばれるようになりました。こうしたPEファンドによるニーズを受けて欧米で発展した「表明保証保険」ですが、昨今のM&Aの増加に伴い、アジア圏でも徐々に普及してきています。 

――日本企業の活用事例はあるのでしょうか。

 国内企業においては、これまでクロスボーダーM&Aの際、売主に付保を要請されるなど、いわば受身の姿勢で検討するケースが多く見られました。ここ数年はM&Aを積極的に進める国内企業の担当者、弁護士やファイナンシャルアドバイザー(FA)といったM&A関係者への認知も高まり、売主から特段の要請がないケースにおいても自主的に表明保証保険の導入を検討する企業が増えています。

――より身近な存在として存在感を増す「表明保証保険」ですが、具体的に現状では何社ほどの保険会社が取り扱っており、どういったフローで契約に至るのでしょうか。

 取扱う保険会社に関しては地域によっても異なりますが、欧米では10社前後、国内ですと外資系を合わせてその半分といったところでしょうか。まだまだ国内では発展途上という段階ですので、外資系の保険会社に一日の長がある状況かと思います。なお、保険の手配地は買主が任意に選べるわけではなく、SPA上の買主の所在地など、一定の要件のもと決定します。こうした手配地域やSPAの準拠法、証券の形態よって引受保険会社や補償内容は異なるため、我々のような保険ブローカーを通すのが一般的です。
 契約までのフローは、2段階に大きく分けることができます。まず前半のフェーズでは、企業概要書(IM=Information Memorandum)やSPAドラフトなど主要資料のみで各保険会社から概算見積り(Non-biding Indication)を取得し、初期的な検討をします。そして後半のフェーズでは、見積りの中から保険会社を選定し、買主のデューデリジェンス (Due Diligence)³レポートを含む詳細な資料を開示し、正式な見積りを取得、保険契約を締結します。
 これらのプロセスは実際の案件およびSPA交渉の流れに沿って並行して進めるので、保険手配を検討することによって交渉日程に著しい遅れが出るということはありません。なお後半のフェーズでは、保険会社に対して一定額のアンダーライティング・フィー(引受審査料)が必要となり、入札案件の場合は売主と実質上、独占的に交渉している必要があります。


1 SPA:M&Aにおける売主と買主間の全ての合意事項が記載される書面。 2 エグジットベンチャーキャピタル投資ファンドによる投資資金の回収手段のこと。株式公開による株式売却(IPO=Initial Public Offering)とM&Aによる株式売却等がある。 3 デューデリジェンス:買収対象会社の財務内容やビジネス内容の調査をすること。

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