苦境にあえぐペッパーフードサービス<3053>が、大規模な再編に乗り出しました。大躍進を陰で支えた「ペッパーランチ」をPEファンドのJ-STAR(本社:東京都千代田区)に85億円で売却。生き残りをかけた「いきなりステーキ」は114店舗を閉鎖、200名のリストラを断行します。さらに、アメリカで「いきなりステーキ」を展開し、2018年9月ナスダックにも上場した米子会社Kuni's Corporation(本社:デラウェア州)は事業継続が困難として、7月3日に破産申請をしました。

「いきなりステーキ」の大当たりにより、2017年1月に500円台だった株価が10月には8,230円の高値にまで跳ね上がった伝説の銘柄ペッパーフード。その後、過剰出店による顧客の共食いで失速。新型コロナウイルスが追い打ちとなり、株価は2020年4月に300円台まで下落しました。ペッパーフードは店先に「ポエム」と揶揄される一瀬社長の張り紙を掲示するなど迷走を続けた末に、本格的な再生に取り組みます。そこに勝算はあるのでしょうか?

この記事では以下の情報が得られます。

・ペッパーフードサービスが苦境に陥った理由
・ペッパーランチを売却したわけ
・いきなりステーキの立て直しは実現可能か

ワンマン路線が鮮明になったペッパーランチの売却

売上や利益ではなく「年間200店舗出店」という出店数を目標に掲げた「いきなりステーキ」

まずはペッパーフードがどのような状態に置かれているか説明します。

2019年12月末の段階で、ペッパーフードが1年以内に返却するべき借金は32億8100万円。買掛金は65億6200万円でした。合わせて98億4300万円です。一方、手持ちの現金は24億6900万円、売掛金は22億8600万円で合計47億5500万円です。未収金などすべての流動資産を合わせても74億8600万円。現金が足りていません。

また、長期借入金が50億円近くあり、自己資本比率はわずか2%。安全水準の40%をはるかに下回っています。銀行からは借り入れができない状態なのです。

そこで、2019年末にSMBC日興証券(本社:東京都中央区)に新株予約権を発行して資金調達をしようとしました。うまくいけば70億円、最低でも35億円を調達する計画でした。しかし、新型コロナウイルスの発生により、新株予約権の行使価額の下限666円を、株価が下回る事態となりました。想定外の出来事が起こったのです。資金繰りが悪化したペッパーフードは、3月25日にGC注記がつきます。

ペッパーフードは2019年12月末の時点で、発行可能株式総数が70,800,000株あります。仮に20,000,000株を300円で事業会社などに割り当てれば、単純計算で60億円の調達となります。増資による危機回避は十分可能でした。

しかし、ペッパーフードはその道を選びませんでした。ペッパーランチ事業をJ-STARに売却し、85億円を調達したのです。一瀬氏は17.11%(360万株)を保有する筆頭株主。増資によって支配権が失われ、自らの経営権が脅かされることを嫌ったものと考えられます。