新型コロナウイルスの緊急事態宣言後、鳥貴族<3193>とエー・ピーカンパニー<3175>が次々と持株会社体制への移行を発表しました。どちらも都市部を中心に居酒屋を主軸として展開してきた会社。ホールディングス化することで新会社を設立しやすくできるほか、買収や合併がスムーズに行えるようになります。また、グループ会社の独立性が保たれ、迅速な意思決定や経営判断もしやすくなります。

高利益体質のアルコール業態で稼いできた居酒屋企業は、新型コロナウイルスによって一本足打法の見直しを迫られることとなりました。持株会社体制への移行は、日常食業態への参入やEC、テイクアウト、デリバリーなど新たな事業展開を活性化させる萌芽とみることができます。

この記事では以下の情報が得られます。

・持株会社体制とは何か
・持株会社体制に移行することのメリットとデメリット
・ホールディングス化した居酒屋企業がどのような変貌を遂げたか

鳥貴族の次なる創業は成長の起爆剤となるか?

鳥貴族は持株会社体制に移行する目的として、新たな事業の立ち上げとそれを担う人材の開発を挙げています。すなわち、社内ベンチャーによって新業態を立ち上げやすくし、それを統括できる人材の成長を促すためにホールディングス化を決めたのです。

新業態の立ち上げと人材育成だけであれば、社内カンパニー制を設ければ十分です。しかし、社内カンパニーは株式を発行しない架空の会社。鳥貴族の持株会社への移行は、創業という重みに耐えうる人材を育てるという覚悟が見え隠れします。また、他企業の買収で力のある経営者を迎え入れることも視野に入っていると考えられます。

鳥貴族は、創業社長の大倉忠司氏が東大阪に1985年にオープンした焼き鳥専門店「鳥貴族 俊徳店」が礎になっています。オープン当初から均一料金にこだわり、現在の298円均一のブレない姿勢にその精神が脈々と受け継がれています。2020年4月末時点で店舗数は639店舗(直営店は393)。居酒屋各社が複数のブランドを立ち上げる中、鳥貴族だけは1ブランドで驚異的な成長を遂げました。

しかし、新型コロナウイルスによって状況は様変わりします。4月の売上高は前年同月比3.8%、5月は12.1%と激しく落ち込みました。2020年7月期第3四半期の売上高は前期比14.9%減の230億2400万円。純損失は1億5300万円(前年同期は3億1000万円の黒字)となりました。直営店20店舗を退店しています。

鳥貴族は強力なブランドのファンに後押しされ、空中階でも集客できる体制を作り上げました。1つのブランドで居酒屋を展開できることほど、効率的な経営ができるものはありません。ブランド管理、業態開発、販促、メニュー開発コストなどを最小限に抑えることができるからです。鳥貴族は、夢のような経営体制からの見直しを迫られることとなったのです。

鳥貴族の一歩先を行っていたのが、同じく1ブランドで展開していた串カツ田中ホールディングス<3547>です。2017年12月に持株会社体制へと移行、2020年2月にみたのクリエイト(本社:沖縄県中城村)から「鳥と卵の専門店 鳥玉」ブランドを譲受しました。串カツ田中は子会社セカンドアロー(本社:東京都品川区)を設立し、店舗運営やFC展開に注力しています。串カツ居酒屋一本立ちだった串カツ田中は、持株会社化によってフードコートを軸とした日常食業態へと進出したのです。

買収防衛策としても機能する持株会社

そもそも持株会社体制とはどのようなものでしょうか。メリットとデメリットも含めて説明します。

持株会社とは、事業を支配するために傘下に置いた会社の株式を保有する会社を指します。純粋持株会社と事業持株会社、金融持株会社の3つがあります。純粋持株会社は事業を持たず、子会社の事業を支配することが目的となります。子会社からの配当が売上です。事業持株会社とは、子会社を支配しつつ自らも事業を行う会社です。金融持株会社は銀行などが株主になって子会社を支配する会社です。

多くの場合は純粋持株会社です。鳥貴族は持株会社体制に移行するにあたり、鳥貴族ホールディングスの下に鳥貴族JAPANを設立します。この場合、鳥貴族ホールディングスが、居酒屋事業を営む鳥貴族JAPANを支配する純粋持株会社です。

持株会社のメリットは大きく3つあります。

・経営戦略、意思決定の迅速化
・M&Aなど再編の効率化
・買収防衛

持株会社はグループ全体を見渡しながら経営戦略を練ることができます。子会社はそれぞれが独立して事業管理ができるため、経営戦略の策定や意思決定が迅速に行えるようになります。

各事業が会社として独立することにより、企業買収や売却、新会社の立ち上げがスムーズに行えます。会社ごとに独立した決算となるため、適正な事業評価がしやすく、再編の意思決定が容易になります。

事業会社の株式を持株会社に統合しておけば、子会社に対して敵対的買収を仕掛けることが困難となります。また、創業者や創業者一族などに分散した株式を、持株会社に集約することも買収防衛策の一つとなります。

一方、デメリットもあります。

・業務管理コストの増加
・情報伝達や連携の不備

事業をそれぞれ独立した会社にすることで、法人維持コストが嵩みます。例えば経理。それぞれの会社が独立した決算を出すことは、経営戦略上はメリットが大きいものの、その分の経理費用がかかります。その他、人事や法務、総務などのバックオフィス業務が重複し、人件費や運用費、システム費用がかかります。

最大のデメリットは、子会社間の連携が極めてとりづらくなることです。持株会社体制に移行すると、独立した子会社同士の連携はほとんど失われます。また、親会社と子会社間での情報伝達が困難になるケースもあります。最悪の場合、子会社が重大な悪材料を隠蔽することもあります。それにより、誤った意思決定を下したり、不祥事の温床にもなりかねません。