生活領域のマッチング、急速に広がる

ー昨年1月に生活領域で、クックパッドの傘下企業から習い事マッチングサイト「サイタ」を事業買収しました。

個人に報酬を届ける事業は企業からの依頼に基づく「仕事」領域のほか、趣味や特技が生かす「生活」領域、個人が所有物をシェアして対価を得る「モノ」領域の3つがある。このうち生活領域にフォーカスしたのが「サイタ」。英会話やギター、カメラなど300種類以上のプライベートレッスンを提供している。教える側のコーチは自分のスキルを生かして報酬を得られる。

習い事以外にも家事代行、運転代行、弁当宅配などさまざまな形で、生活領域での報酬が急速に拡大してきている。小さな単位のニーズと小さな単位のスキルがインターネット上でマッチングする流れは加速度的に広がるのではないか。サイタの可能性も無限だと思う。

ー業績面では2018年9月期に初めて営業黒字を達成しました。

上場時から数年は赤字が続くとアナウンスしていたので、赤字は想定内。一方で、通期で黒字を果たして社会的に持続可能なビジネスモデルであることを社員が思えたのは非常に意義がある。

利益が出ていること自体は重要。だが、利益の多寡が最重要かというと、今はそういうタイミングではないと思っている。総契約高で40%以上の成長と営業黒字の両立を最低限キープしたい。

ー海外展開については。

シェアリングエコノミー関連で米国、インドネシア、インドの企業に出資している。インドではドライブジーというカーシェアの企業に出資したが、同社はユニコーン(企業評価額10億ドル以上)へ成長が期待されるほどで、今後を楽しみにしている。

とはいえ、海外の優先順位が高いわけではない。国内の働き方が非常にレガシーで、社会的課題があるので、まずは国内をきちんと立ち上げることが重要だと思っている。

成長ドライバーのM&A、「ワープ」も視野に

ーM&A戦略の基本スタンスやこれまでの取り組みは。

2017年にWebシステム開発の電縁、Webクリエイティブ事業のgravieeを子会社化した。先に述べたサイタと合わせ、これまで3件のM&A(2社・1事業)を手がけたが、いずれも事前の事業計画を上回っており、PMI(買収後の統合プロセス)はうまく進んいる。

なかでも電縁の買収は10億円近い金額だったが、のれん込みで黒字を達成し、利益貢献している。事業シナジーの点でも、電縁がグループに加わったことで、NTTデータ、富士通、NECといったIT大手をクライアントに取り込むことができた。

M&Aにおいては本体の事業へのシナジーがあると同時に、本体の事業で培ったノウハウとかデータベースを生かして企業価値の向上につながることがまず肝要だ。要は当社のビジョンに合致しているかどうか。実は最初のM&Aに失敗し、少なからず授業料を払った苦い経験をしたが、これが後々の糧になっている。

ービジョン実現には大胆なM&Aも必要になりそうです。

2030年代に日本一の就業インフラになるという目標から逆算すると、全然、今の成長では足りないと思っている。成長ドライバーとしてM&Aを仕掛けていきたい。いずれは(一から事業を立ち上げる時間を買うような)ワープが必要となるだろう。ソフトバンクも楽天も、それが今日にいたる原動力になっている。今後は、自分たちよりも規模が大きい相手を買収することが当然考えられる。

〇吉田  浩一郎さん(よしだ・こういちろう)

東京学芸大学卒業。パイオニア、リード エグジビション ジャパンを経て、ドリコムの執行役員として東証マザーズ上場を経験した後、独立。アジアを中心に海外へ事業展開し、日本と海外を行き来する中でインターネットを活用した時間と場所にとらわれない働き方に着目し2011年11月にクラウドワークスを設立し、代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に就任。1974年生まれ。神戸市出身。

聞き手・文:M&A Online編集部 黒岡 博明