2030年代に「日本一の就業インフラ」実現を

ー会社を立ち上げたのは「3.11」(東日本大震災)の年。起業のきっかけは何ですか。

20世紀的な価値観では生活・人生の中心は会社だった。会社でメーンの時間を過ごし、その以外が余暇の時間。おカネを稼ぐ時間とおカネを使う時間がはっきりと分かれていた。私も元々、新卒で電機メーカーに入社した。

3.11を機に、会社主体の人生の揺り戻しが起きた。家族と過ごすことをメーンに置きながら働くという選択をする人が現れた。あるいは、自分の実家を含め地域に根差した働き方をしたい人が現れた。会社主体の人生から、会社というのも自分の人生の関係を結ぶ一つの要素に過ぎないという風に人々の考えが変わったように思う。

インターネットで仕事のマッチングを行うクラウドソーシングのビジネスモデルは2005年ごろから米国で立ち上がっていた。2社目の起業だったが、現在のクラウドワークスを立ち上げようと考えたのは大震災からひと月ほどしてのこと。個人が自由に働ける環境が日本でも広まってくると強く感じた。

ー「日本一の就業インフラ」の実現に向け、どういうタイムスパンを描いていますか。

1兆7000億円という報酬額指標に対し、現在当社が届けている報酬額は86億円(2018年9月期実績。契約額ベースは111億円)に過ぎない。進捗でいえば、170分の1に満たない。この先、2030年代には目標を実現したいと思っている。

派遣市場のコスト構造を変える

ーそのための手立ては。

潜在市場と顕在市場の2軸でとらえている。後者の顕在市場はいわゆる人材派遣の領域。これは当社がかかわることでコスト構造を大きく変えられる。通常、営業担当者はクライアントを訪問してまず挨拶し、ニーズを聞き出し、スキルや条件に合致した候補者を人選して派遣先との面談に臨む。こうした一連のプロセスをオンライン上で完結できれば、6兆円とされる派遣市場のコスト構造が劇的に変化するはずだ。

企業は派遣コストを下げられ、ワーカーには報酬をさらに届けられる余地が生まれる。現に当社の場合、マッチング成立の半数は面談部分を含めてオンライン上で完結している。

ー潜在的な労働力市場はどう掘り起こしますか。

子育てや介護を理由にフルタイムで働くことが難しい人や、より自由なライフスタイルを求めるITエンジニアなどクリエーター、さらには副業・兼業・在宅ワークの希望者に新たな活躍の場を提供したい。

直近で注目されるのは副業。政府も副業を容認している。他方、企業は終身雇用を約束できなくなっている。個人が企業の傘下にある形から、今後は企業とパートナーの関係で働く時代になると思う。副業のマーケットをどのように啓もうできるかが当社成長のカギとなる。

もっとも、副業は「私はやっていますよ」と開示するものでもない。実態を把握しづらいところがあるが、波はすごく感じる。昨夏、ゴールデンタイムのテレビ番組に取り上げられた際、驚くことに当社のアプリが「App Store」で3日間トップとなった。ソーシャルゲームでもなく、メルカリのフリマアプリのように一般生活で使うツールでもないのにダントツ1位に。3.11を機に人々の意識が変わり、会社以外で当たり前に何かしら稼ごうという意識が出てきたのかなと思う。