NEXT STORY
ハイブリッドで成長し、電気自動車で取り残される「日の丸電池」
本格的なEV時代を迎え、日本経済にとって新たな懸念材料が浮上してきた。EVの基幹部品となるリチウムイオン電池の動向だ。世界の車載電池市場を席巻した日本勢に急ブレーキがかかり、中韓勢に追い越されている。なぜ、こんなことになってしまったのか。
2021年3月期にトヨタ自動車<7203>が全保有株を売却した企業8社が、有価証券報告書で明らかになった。内訳は特定投資株式の6社と、みなし保有株式の2社。2020年3月期に社名が明らかになったのは特定投資株式の4社で、2倍に増えている。
このうち、みなし保有株式のNTTドコモ株は2020年11月に親会社のNTT<9432>によるTOBが成立、上場廃止したのを受けてのものでトヨタ側の事情ではない。
みなし保有株式とは株式を保有せずに議決権行使権またはその指図権を有する株式のこと。トヨタの場合は保有株式を退職給付信託に拠出したが、議決権行使の指図権は留保している。ダイフク株も退職給付信託による売却であり、トヨタの経営戦略とは関係ないと思われる。
企業名 | 売却株数 | 貸借対照表計上額(百万円) | 株式の種類 |
---|---|---|---|
ダイセル | 15,000,000 | 11,835 | 特定投資株式 |
不二越 | 714,443 | 2,086 | 特定投資株式 |
椿本チエイン | 704,400 | 1,732 | 特定投資株式 |
TPR | 1,370,600 | 1,578 | 特定投資株式 |
芝浦機械 | 484,000 | 1,038 | 特定投資株式 |
三櫻工業 | 1,497,775 | 1,024 | 特定投資株式 |
NTTドコモ | 7,431,000 | 25,094 | みなし保有株式 |
ダイフク | 1,099,000 | 7,528 | みなし保有株式 |
トヨタの経営戦略と深く関わっているのは、特定投資株式の6社だ。特定投資株式とは、保有目的が純投資以外の株式のこと。トヨタでは「自動車関連(調達)取引の維持・発展」を保有目的としている。
売却されたのは自動車部品や工作機械メーカーの株で、事業環境が変わり取引維持のための株式を保有する必要がなくなったとみられる。さらに2021年3月期決算が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で売上高、営業利益ともに減少し、当期純利益を増益に転じるために保有株式を手放した可能性もありそうだ。
この他にもトヨタが全株を売却した企業もあり、2021年3月末時点でトヨタが保有する株式は上場企業が対前期比11社減の54社、非上場企業が同6社減の103社。一方、貸借対照表計上額の株価合計額は上場企業が同38.8%増の2兆4727億円、非上場企業が同1.7%増の2998億円と逆に増加している。
年度 | 上場企業数 | 非上場企業数 | 合計 | 上場企業の貸借対照表計上額の合計額(百万円) | 非上場企業の貸借対照表計上額の合計額(百万円) | 合計(百万円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2020年3月期 | 65 | 109 | 174 | 1,780,972 | 294,930 | 2,075,902 |
2021年3月期 | 54 | 103 | 157 | 2,472,793 | 299,824 | 2,772,617 |
増減 | -11 | -6 | -17 | +691,821 | +4,894 | +696,715 |
文:M&A Online編集部
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。
本格的なEV時代を迎え、日本経済にとって新たな懸念材料が浮上してきた。EVの基幹部品となるリチウムイオン電池の動向だ。世界の車載電池市場を席巻した日本勢に急ブレーキがかかり、中韓勢に追い越されている。なぜ、こんなことになってしまったのか。