東急が取り組むコロナ後の「都市型鉄道」|人とものを「運ぶM&A」

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武蔵小杉のタワーマンション群

大都市東京は、コロナ禍で大きく傷ついたのだろうか。連日報道される飲食店や観光業のダメージ、東京2020オリンピックも開幕前から賛否で大きく揺れた。人流抑制、テレワーク促進によって働き方、通勤や通学の流れも変化した。

その中で“渋谷の大家”と呼ばれた東急電鉄(東急)に注目してみたい。東京メトロでさえ小田急と組んでロマンスカーを運行しているのに、誰もが連想する箱根や日光など首都圏の行楽地に自社ではアクセスしていない。加えて空港アクセスもない。さらに、特急もない…。有名だけど、実は“無い無い尽くし”の私鉄。きっと、別のことを考えているはずだ。

ムサコを追撃する2つのムサコ

「ムサコ」と聞いて、まず思い浮かぶのは東急「武蔵小杉」駅だろう(地元では「コスギ」と主張する人もいる)。ムサコはタワーマンションで人気が急上昇した。その数なんと2018年末で14棟。この「ムサコ人気」を追い上げてきたのが、2つのムサコ、東急目黒線「武蔵小山」駅とJR東日本・中央線「武蔵小金井」駅だ(武蔵小山は「サシコ」と言う人もいれば、武蔵小金井こそ生粋の「ムサコ」と譲らない人もいる)。

武蔵小金井は駅ビルの「nonowa武蔵小金井」で“ムサコ・スタイル”を標榜するが、武蔵小山も負けてはいない。武蔵小山パルム駅前地区の再開発は2020年1月に完成。武蔵小山駅前通り地区は2021年6月にシティタワー武蔵小山として竣工したばかり。さらに小山三丁目第1地区(2028年度完成予定)と小山三丁目第2地区(2021年度中の都市計画決定)と、東急が再開発にどこまで関わっているかは定かではないが、まさに元祖ムサコを追い上げムードだ。

なぜ、「特急」列車がないの?

東急といえば渋谷。渋谷駅周辺は変貌を遂げるものの、そこにはかつて「渋谷の大家」と呼ばれた東急の存在感は薄い。東急「渋谷」駅は地下へ移動し、駅に直結していた東急百貨店東横店は2020年3月31日に閉店。少し離れた東急百貨店本店も2023年以降に解体され、一帯は再開発を進める予定となっている。

その東急には、他の有力私鉄にはあるのに、ないものがある。特急列車だ。グループ会社の伊豆急にTHE ROYAL EXPRESSがあるが、それはJR東との運行で団体臨時列車の位置づけだ。

指定席列車としてはS-TRAINがある。西武「西武秩父」駅からみなとみらい線「元町・中華街」駅をつなぎ、西武鉄道、東京メトロ、横浜高速鉄道との4社による運行だが、使用車両は西武40000系と西武鉄道色が強い。また、東急大井町線有料座席指定サービス「Qシート」もあるが、いずれにせよ特急料金は発生しない。

なぜ、有料の特急がないのだろう。目立った観光地に直結する時間短縮のニーズがなかった、急増した沿線人口の輸送だけで手一杯だった、路線づくりより街づくりを優先した…様々な理由が考えられるが、いま優先すべきは線路ではない。これが都市型鉄道の証なのかもしれない。

近年、目立ったM&Aもない東急

東急の前身は目黒蒲田電鉄(1922年創立)である。目黒蒲田電鉄は田園都市構想を描く渋沢栄一らによって誕生し、事実上の創業者である五島慶太が取り仕切って、その後の発展につながった。

目黒蒲田電鉄は大井町線、姉妹会社の東京横浜電鉄を吸収合併して東京横浜電鉄となり、昭和に入って玉川電気鉄道、江ノ島電気鉄道を吸収し、いわゆる戦時統合で小田急電鉄、京浜電気鉄道社、京王電気軌道などを含めた「大東急」(社名は東京急行電鉄)となる。戦後はそれぞれの独立した鉄道会社になるが、首都圏の私鉄史を大きく変えた。

勇ましい歴史がありながら、実は東急には、近年目立ったM&Aはない。M&A Onlineでも下記に挙げた程度である。

アークス<9948>、東急電鉄<9005>傘下の札幌東急ストアを子会社化 2009/9/14
東京急行電鉄<9005>、東急車輛製造の鉄道車両事業をJR東日本<9020>へ譲渡 2011/10/27
東京急行電鉄<9005>、東急車輛製造の立体駐車装置など2事業を新明和工業<7224>へ譲渡 2011/10/27
東京急行電鉄<9005>、スキー場経営の白馬観光開発を日本スキー場開発へ譲渡 2012/9/28
東京急行電鉄<9005>、東急レクリエーション<9631>を子会社化 2016/2/10

※2019年9月2日、東京急行電鉄から東急へ商号変更。鉄軌道事業は会社分割により、2019年10月1日付で「東急電鉄」に分社化。

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