ヒューリック<3003>が不動産事業で新規領域の開拓にアクセルを踏み込んでいる。東京23区の駅近を中心にオフィスビルを多数保有する同社だが、後発ながらここへきて攻勢を強めているのがホテルだ。

6月初め、浅草ビューホテルなど20ホテルを運営する日本ビューホテル<6097>を買収することを決めた。ビジネスホテル「ゲートホテル」と高級旅館「ふふ」のシリーズ展開を進めているが、知名度の高い「ビューホテル」ブランドを傘下に取り込み、ホテル業界でも存在感が一気に増す。

資本業務提携から「買収」に踏み込む

ヒューリックは6月7日、日本ビューホテルを株式交換で完全子会社化すると発表した。両社は2015年10月に資本業務提携し、ヒューリックは日本ビューホテル株式の約26%を保有する筆頭株主となり、持ち分法適用関連会社としていた。

日本ビューホテルはホテルを中核に、結婚式場、遊園地を展開するが、人手不足に伴う人件費上昇、少子化による婚礼需要の減少などを背景に経営環境が厳しさを増している。ヒューリックはインバウンド(訪日観光客)増加やこれに伴う国内の客室不足に対応するには資本業務提携では十分な効果が期待できないとし、子会社化に踏み切ることにした。

7月25日に開く日本ビューホテルの株主総会で承認を得て、9月1日に株式交換を実施する。日本ビューホテル株式1株に対しヒューリック株式1.57株を割り当てる。日本ビューホテルは8月29日付で上場廃止(東証1部)となる。

「浅草ビューホテル」(東京・浅草)

日本ビューホテルは浅草ビューホテル、成田ビューホテル、伊良湖ビューホテルなど13ホテルを直営するほか、福島県や沖縄県などで提携7ホテルを受託運営し、全国的なホテルネットワークを持つ。同社の2019年4月期業績は売上高1.3%増の215億円、営業利益22.9%増の7億5800万円、最終赤字15億円(前期は約3億円の黒字)。

日本ビューホテルの歴史は戦後の1950(昭和25)年、栃木県那須町に開業した旅館「石雲荘」に始まる。その後、洋風ホテルに転進し、1960年に那須ビューホテルをオープンし、ホテル事業者として業容を拡大した。旗艦ホテル・浅草ビューホテルの開業は1985年だ。

しかし、バブル期のゴルフ場開発など不動産開発事業への過大投資が裏目に出て、2001年に民事再生手続き開始を申請(負債総額は約800億円)。経営再建を果たし、2014年に東証2部に上場、翌年1部に昇格した。

発祥の地・那須町では「那須りんどう湖レイクビュー」を経営する。テーマパークのはしりで、観光牧場と遊園地の両方を楽しめる。ただ、レジャーの多様化とともに、近年は集客力が低下している。

新規のホテル案件、すでに検討中

日本ビューホテルはヒューリック傘下入りを機に、ホテル事業に経営資源を集中する。すでに、ヒューリックが不動産を開発・保有し、日本ビューホテルがホテル運営を行うスキームで、銀座エリア(東京)などで具体的な新規案件を複数検討中としている。また、都心部にとどまらず、首都圏や観光都市でも年間1~2件のペースで新規開業を目指す。