宝印刷はディスクロージャー(企業情報の開示)のパイオニアとして、上場企業はもとより、上場予備軍の企業から、頼りにされる存在だ。商業印刷や出版印刷と一線を画し、有価証券報告書株主総会招集通知などに代表される「フィナンシャルプリンター」(金融関連専門の印刷会社)の第一人者を任じる。

ここへきて力を入れるのがグローバル展開。アジア市場に上場を検討する顧客企業へのサポート体制の構築や、外国人投資家に向けた情報開示書類の翻訳ニーズの高まりに対応するのが狙いだ。その布石づくりとして国内外でM&Aにアクセルを踏み込んでいる。

初の海外M&A、シンガポールの翻訳会社を傘下へ

宝印刷は昨年11月に翻訳・通訳事業を手がけるシンガポールTranslasia(トランスラジア)を買収した。同社初の海外M&Aで、約5000万円で第三者割当増資を引き受け、株式97.3%を取得した。

これに先駆け、宝印刷は2013年に初の海外拠点として香港駐在員事務所を開設。アジア主要国の証券市場に上場を検討する日本企業を支援するのが目的で、2015年3月には「タカラ・インターナショナル香港」として現地法人化した。

トランスラジアは2017年に設立し、シンガポールを中心にマレーシア、香港で翻訳・通訳事業を展開する。同社を傘下に収めることで、香港子会社との連携などを通じて東南アジアに進出する既存顧客へのサービスを拡充する。翻訳対象言語の拡大も狙いの一つだ。

具体的には、各国上場規程の日本語翻訳といった新ビジネスを取り込むほか、外国人株主の増加やコーポレートガバナンス・コード(上場企業の行動規範)対応に伴い情報開示書類の翻訳ニーズが膨らんでいるのに対応する。

2015年には米国の同業大手メリル・コーポレーションと業務提携した。日本企業が海外で資金調達する際に必要となる海外向け英文目論見書の作成、米国上場する日本企業に提供するEDGAR(金融庁のEDINETに相当)ファイリングの代行サービスに関し、日本国内向けと同時にワンストップでサポートする体制を整えた。

これらの事業は昨夏、メリルから凸版印刷グループに譲渡され、トッパン・メリル(香港)に移管された。宝印刷は既存サービスを継続するため、3月末にトッパン・メリルと新たに業務提携した。