長瀬産業は化学品の専門商社として歩んできた。染料、ケミカル材料を主体に事業領域を拡大し、化学業界はもちろん、エレクトロニクス、自動車、ヘルスケア、食品関連などに強固な顧客基盤を築く。近年、M&Aによる成長投資にも余念がない。

同社は江戸末期の1832(天保3)年に京都・西陣で創業し、「200年企業」を視界にとらえつつある。日本を代表する長寿企業の一つだが、その歴史の中で同社最大級のM&Aに踏み切る。6月初め、米国の食品素材大手、プリノバ・グループ(イリノイ州)を約680億円で買収すると発表した。

米の食品素材大手を傘下に

「プリノバの専門知識、独自のポジション、製品群を加えることで、北米、欧州、アジアで食品と栄養成分のバリューチェーンを拡大できる」。長瀬産業の朝倉研二社長はプリノバが発表したニュースリリースの中で、買収の意義をこう語っている。

プリノバは1978年に設立し、欧米を中心に原料、風味や栄養強化製品を、ベーカリーや飲料、製菓、乳製品、スポーツ食品などの分野に提供している。とくにビタミンC、ビタミンBやアミノ酸の調合・配合では世界的大手とされる。

米、英、中国に製造拠点を持ち、米、英、カナダ、メキシコなど12カ国に販売網を展開する。2018年12月期業績は売上高841億円、営業利益45億3000万円、純資産96億円。

長瀬は米子会社「ナガセ・ホールディングス・アメリカ」(ニューヨーク)を通じて、プリノバの株式93.6%を取得する。7月上旬に買収完了を見込む。

買収金額は6億2100万ドル(約680億円)。長瀬は2012年にバイオ企業で食品素材に強みを持つ林原(岡山市)を約700億円で完全子会社化したが、これにほぼ匹敵する。

林原は低甘味の糖質「トレハロース」「サンマルト」、食品の接着に使われる多糖質「プルラン」などを主力としている。プリノバを欧米における食品素材事業の中核基盤と位置づけ、林原との連携を進め、日本・アジア、欧米での事業拡大を目指す。

長瀬は2020年度(2021年3月期)を最終年度とする中期経営計画「ACE-2020」の中でライフ&ヘルスケアを注力領域とし、その要の一つが食品素材事業。巨費を投じる今回の大型M&Aは期待の大きさの表れといえる。

世界的規模でグループ内の事業シナジー(相乗効果)をどう最大化できるのか。その成否は2032年の「創業200年」を見据えた長期戦略を左右することにもなる。

長瀬産業の東京本社(東京・小舟町)