ATCの改良と高精細映像の通信がカギ

従来のATCで自動運転ができなかった理由の一つは定時運行の維持だ。新幹線の定時運行には運転手がATCの制御がかからない範囲で手動の加減速を繰り返し、秒単位のダイヤ通りに到着させる必要がある。

ホームでの停車も問題だ。通常、新幹線は時速30km以下になった時に運転士が確認ボタンを押してATCブレーキを解除し、手動ブレーキで停止する。もちろん自動停車もできるが、いわゆる「カックンブレーキ」と呼ばれる乱暴な停まり方になる。

さらにATCでは落石など線路上の障害物を感知できないため、運転士が常に前方を視認して異常があれば直ちに手動で緊急ブレーキをかけなくてはならない。理論上は「可能」でも、実際の運用となると自動運転にはハードルがあったのだ。

JR東日本は2018年7月に発表したグループ経営ビジョン「変革2027年」で、コスト削減のために無人の「ドライバレス運転」の実現を宣言した。試験車両E956形「ALFA-X」での夜間無人走行試験の成果を踏まえ、営業車両を利用した実証実験の段階に入る。

自動運転の実験をしたJR東日本の試験車両「ALFA-X」(同社ホームページより)

実証実験では遠隔操作により列車が発車し、自動加減速や定位置での停車、緊急停止ができるかなどを検証していく。スムーズな加減速や定位置での停車といった通常運転については、アナログATCを改良してスムーズな減速が可能になった現行のデジタルATCの技術を改良する。

緊急停車については新幹線と指令室との間で車両前方の高精細映像などの大容量情報をリアルタイムで送受信しなくてはならない。そのため、沿線に専用基地局を設置したローカル5G(第5世代移動体通信)方式による無線伝送などを検証する。

東海道新幹線が「道筋」をつけた新幹線の自動運転が、いよいよ実用化に向けて動き出した。実証実験に成功すれば、7年後には無人で運行する新幹線が登場することになりそうだ。

文:M&A Online編集部