大江橋法律事務所の弁護士8人が共同で事業譲渡に関する実務の全体像が分かる書籍「事業譲渡の実務-法務・労務・会計・税務のすべて」(商事法務刊)を発行した。どのような内容なのか。筆者のうちの関口智弘氏、竹平征吾氏、山口拓郎氏の3氏に話を聞いた。

事業譲渡を正面から取り上げた本はあまり無かった

事業譲渡に絞って書かれていますが、どういう狙いがあったのですか。

関口「MAの本はあまたあるが、事業譲渡を正面から取り上げた実務書はあまりなかった」

山口「あっても営業譲渡と呼ばれていた時代のもの、2006会社法施行より前のものであった」

関口「具体的には営業譲渡ハンドブックというしかない。これは1980年代に発行されたもので、はるか昔の商法をベースにしている。我々事業譲渡について調べる時に困っていた。そこで今回、事業譲渡をテーマとする本を書くことにした。どうせ書くなら、法務だけでなく、労務や会計税務まで広げた本格的な専門書を書くことにした」

-関口さんは何章を担当されたのですか。

関口「私は第6章の事業譲渡契約と巻末の事業譲渡契約モデル条項を担当した。6章では巻末に載せている事業譲渡契約モデル条項について逐条解説を行っている。我々が日常使っている事業譲渡の契約書のうちで、特殊性の強い条項を削ぎ落できるだけ標準的なものをモデル契約書として使っている」

個々の条文自体はプレーンなものだが、逐条解説としては、各条項の法的な意味合いや解釈上の留意点、実務上の取扱い、さらには、契約交渉どのような点が問題になるのかということや、その場合に売主、買主がそれぞれの立場でどのような主張がありうるのか、といった交渉上の留意点なども書いている。学術的な議論にはあまり踏み込まず、実務での使いやすさを意識して、コンパクトにまとめ

-確かに契約書についてはニーズがありそうですね。

関口「契約書作成の技術弁護士のノウハウのようなものなので、これまではあまり書籍として出ていなかったのだろう」

山口「合併会社分割の契約書は、適時開示の際に添付書類として付けるのでネットで公開されるが、事業譲渡契約書が公開されることはあまりない」