企業法務弁護士が語る「中小オーナー企業のM&A準備」
「中小企業買収の法務ー事業承継型M&A/ベンチャー企業M&A」の著者である柴田堅太郎弁護士が、M&Aの現場で感じたことを思うままに綴るコラムです。今回は中小オーナー企業のM&A準備について
公開日付:2018.10.23
事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の利用申請が増えている。2018年度は10月15日時点で上場企業を含め5件(9社)で、件数ベースで2017年度の5件(14社)に並んだ。
今年7月の産業競争力強化法の改正で、事業再生ADRから会社更生や民事再生など法的手続きに移行した場合の商取引債権の保護に関する規定が明記され、利便性が増した。金融機関が再生を要する企業の利用を探る動きもあり、さらに利用が加速する可能性がある。
事業再生ADRは2008年11月、私的再生スキームの1つとして運用が始まった。産業競争力強化法に基づき、経済産業大臣から特定認証紛争解決事業者として認定を受けた機関の仲立ちが必要。事業再生実務家協会(JATP)は、国内唯一の認証機関となっている。
JATPによると、事業再生ADR利用申請のピークは2009年度の17件(108社)。その後、事業再生支援協議会や地域経済活性化支援機構(REVIC)など官主導の再生スキームの拡充や、金融円滑化法終了(2013年)後の暫定リスケの運用開始などで2016年度は2件(6社)にまで落ち込んだ。
事業再生は、事業会社から医療法人、協同組合まで幅広く扱い、活性化投資ファンドも手掛けるREVICが中心になっていた。だが、ここにきて支援姿勢に変化が生じている。 REVICを所管する内閣府・地域経済活性化支援機構担当室の担当者は、「2018年5月のREVIC法の改正に伴い、REVICは事業再生から人材・ノウハウの移転による地域金融機関での再生支援の強化に舵を切った」と話す。
事業再生ADRを所管する経済産業省・経済産業政策局の担当者は、事業再生ADRの利用申請の復調について「REVICの姿勢の変化が大きい」と明かす。
今年7月、産業競争力強化法が改正され、事業再生ADR申請後の商取引債権の弁済に関する確認規定が盛り込まれた。これまでは法的整理に移行した場合、商取引債権がカットされ事業価値の毀損に繋がる恐れがあった。だが、改正後は万が一、法的整理に移行しても優先的に弁済されるよう裁判所が考慮する規定を設けた。利便性が向上した事業再生ADRの利用が増える可能性が高まっている。
JATPの担当者は、「最近、事業再生ADR手続に準じた任意整理が行われているようだ。債権放棄を伴う再生計画の場合、事業再生税制を利用できないこともあるだけに、事業再生ADRを積極的に活用してほしい」と話す。
金融円滑化法の終了後、安易な「リスケ」が問題視されている。産業競争力強化法改正で増加が見込まれる事業再生ADRが、事業再生スキームの救世主になり得るのか。真価を問われるステージが待ち受けている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年10月24日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)
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会社を譲渡するにあたり、情報漏えいは会社の存続に関わるといっても過言ではありません。M&Aを進める際には、売り手と買い手の間で「秘密保持契約」を締結します。
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