後継者難による事業譲渡や海外企業の買収、ベンチャー企業の出口戦略など、M&Aを取り巻く環境が大きく変わってきた。法務の現場ではどのようなことが起きているのか。M&Aの実務に携わる、大江橋法律事務所の弁護士4人に近年の傾向や今後の見通しなどを聞いた。

事業承継ニーズにより増える中小案件と国際化

大江橋法律事務所は1981年に大阪で設立された法律事務所で、1995年に上海事務所を、2002年に東京事務所を、2015年に名古屋事務所を開設し、現在約140人の弁護士(東京と大阪で約半数ずつ)が所属する。このうちM&Aにかかわっているのは約20人で、M&Aに加えて事業再編や倒産、独占禁止法などにも強みを持つ。

「中小規模案件が増えている」という関口弁護士

関口智弘弁護士は東芝メモリの買収や、中国信託銀行による東京スター銀行の買収といった大型M&Aに関与し、さらには大手電機メーカーの役員責任調査委員会の事務局総括担当などの経験を持つ。

最近のM&Aの傾向として「これまで以上に中小規模の案件が増えている」という。武田薬品工業が日本では過去最高額の6兆8000億円でアイルランドの製薬会社シャイアーを買収するなど、大型の案件が目を引くが、案件の数全体としては中小規模の案件が増加していると見る。

その理由として「売却対象とされる会社や事業で大規模なものの処分はあらかた終わっているのではないだろうか。他方で、中小規模の事業売却ニーズが増えている。後継者難で事業承継が滞っている企業がM&Aという選択をするようになってきた」と分析する。

さらに「手塩にかけて育てた企業を他人には渡さない、という経営者が昔は多かったが、今は事業を売って投資回収するという選択肢が普通になってきた」とのこと。

その一方で「国内だけで完結するような案件は減ってきている。中小規模の事業でも海外に生産・販売拠点があることが多く、海外事業のデューデリジェンス、外国法を踏まえた法的リスクの分析、買収のスキームや手続きの検討などにも対応しないといけない」という。