なぜ、ヒアリング調査を行うか

第1回でお伝えしましたが、労務デューデリジェンスの基本的な流れは、次のようなものです(第1回の記事はこちら)。

1.全体計画の検討
2.労務デューデリジェンスの実施
3.資料の収集と精査
4.ヒアリングや追加調査
5.労務監査報告書の作成
6.改善計画の策定と実施

この「計画して、実行して、まとめる」という流れは、どの社会保険労務士法人の労務デューデリジェンスでも、基本的には変わりません。基本的な流れが変わることがあるとすれば、次の事項を考慮した場合などです。

1.労務デューデリジェンスのウエートづけが変わる場合

労務デューデリジェンスは、一般的な財務のデューデリジェンスとは少し異なり、「正解との“乖離”の幅に許容範囲がある」といったようなケースがあります。たとえば、財務デューデリジェンスの場合は、会計の規則・原則に照らして、何が適合し、どこに不備があるか、また、どう不備であるかについては、専門的ではあるものの比較的明確です。間違った処理をしている場合は、修正しなければならないことも比較的明快に理解できます。

ところが、労務デューデリジェンスの場合は、労基法をはじめ労働関連法規に違反した対応は明快に理解できるでしょうが、「そうはいっても……」という部分が残ることも多いでしょう。服務規程、賞与・退職金を含めた賃金規則、労働時間管理など多くの面で、厳密かつ一律に、杓子定規には対応できにくい部分があるのも事実です。

そこで、依頼する側は、特に正確を期す部分、詳細に確認したい部分などのウエートづけが必要にもなります。そのウエートづけによって労務デューデリジェンスのやり方が少し変わってくることがあるのです。

2.労務デューデリジェンス後の対応

第1回でも触れましたが、労務的対応に不備がある場合、その修正に向けたコンサルティングが発生するケースがあります。そのようなコンサルティングも含めて料金設定している社会保険労務士法人もあれば、それは別料金と考える社会保険労務士法人もあります。

M&Aの労務デューデリジェンスを担当する多くの社会保険労務士法人はどちらでも対応できますが、依頼する時点で「どこまでの労務デューデリジェンスを依頼するのか(社会保険労務士法人が対応するのか)」について、前記「1.全体計画の検討」の段階でできるだけ詰めておくようにしたほうがよいでしょう。そうしないと、料金面で変わってくることはもちろん、労務監査報告書を提出する期間、提出して以降の期間など、トータルの期間が変わってくることもあります。また、それが、依頼する企業、精査を受ける企業、精査する社会保険労務士法人の三方にとって負担になるケースもあります。

これらのことを踏まえると、「チェックリスト」を作成していく段階で、今回お伝えする「ヒアリング」が重要になります。