M&Aにおける労務のデューデリジェンスの最終目的は、監査対象会社(M&Aされる会社)の労務管理の状況を詳細に監査し、不備があればその是正の必要やM&A後のリスクがあることを監査依頼会社(M&Aをする会社)に労務監査報告書によって指摘することです。

労務の実態が炙り出されるだけに、依頼業務範囲を明確に

監査報告書は前回のこの記事で示したとおりですが、その内容は、監査報告書そのものは提示されないまでも、M&Aされる会社が知ることになります。そのようなこともあり、M&Aされる会社が是正のためのコンサルティングを求めるケースがあります(もちろんM&Aする会社がM&Aされる会社に是正のためのコンサルティングをしてもらうことを求めるケースもあります。そうした要望は、これまでこのシリーズで示してきたよう、監査を行う社会保険労務士法人にとっては“オプション”の業務になります)。

また、是正の必要性を指摘し、是正をしていくなかでM&Aの成果をより高めることは、「労務デューデリジェンスの目的」というより「M&Aそのものの目的・目標」です。この点は、一つのM&Aという大きな経営活動に対して、M&Aの当事者はもちろんのこと、社会保険労務士のほかにも、弁護士、公認会計士・税理士、アドバイザーや仲介業者など、実に多種多様な人材が、それぞれの役割や機能を分担して行っていると考えるべきでしょう。それだけに監査依頼会社は誰にどの役割を担ってもらうのか、きちんと“交通整理”しておくことが欠かせません。

なお、デューデリジェンスの結果、そのM&Aが実現されないケースもあります。労務監査上のその主な原因は、労務監査によってM&A後も解決できないリスクを抱えていたり、期待するM&Aの効果が発揮できないような状況と判断されたりする場合です。今回はこの点を踏まえて、「どこに問題が起きやすいか」をピックアップしていきましょう。