2. ルノーが社長か会長の席を獲得するのか?

次に注目すべきは仏ルノーの人事介入だ。ルノーは2019年6月の役員人事で日産の会長職を強く求めていたが、日産側の強い抵抗で断念し会長職が空席になった経緯がある。西川社長が退任するとなると、ルノーが社長交代を機に再び会長職を狙ってくるだろう。

前回は日産側がゴーン前会長の不祥事を突きつけて、ルノーの要請を「どの口が言う」とばかりに拒絶した。今回は立場逆転だ。ジャンドミニク・スナール会長は日産指名委員会の委員であり、西川社長の不祥事を理由として日産側に都合の良い社長人事案を退けることも考えられる。

ルノーのスナール会長は日産の新社長選びでどう動く?(日産ホームページより)

そうなると「妥協案」は、日産から社長をルノーからは会長をそれぞれ選ぶという「たすきがけ」人事だ。当然、経営に対するルノーの発言力は増し、日産との経営統合は一歩前進することになる。

あるいは「ルノーの好き勝手にはさせない」を大義名分に、山内CEO代行が会長に就任してルノーが派遣する社長に目を光らせるという「妥協案」もありうるだろう。だが、仮にそれが実現したとしても、ルノー支配の強化を食い止めることはできない。

なぜなら、ゴーン前会長の追い落としに加担し、ルノーによる経営統合に猛反発した取締役会のメンバーだった山内CEO代行をあえて会長に就任させるということは、両者の間で「経営統合を進めていく」との合意が交わされているとしか考えられないからだ。そうなれば「ソフトランディング」を望むルノーが受け入れる可能性もゼロではない。

日産、痛恨の「判断ミス」

それにしても西川社長がゴーン前会長追放直後に辞任していれば、ルノーにトップ人事への介入と経営支配強化の「口実」を与えることはなかっただろう。「ルノー憎し」に傾き過ぎたあまり、社内で西川社長の責任追及が甘かったことも「傷口」を広げる結果となった。

これから起こる社長交代劇は、日産の自主独立に止(とど)めを刺すことになるかもしれない。日産にとっては痛恨の「判断ミス」だった。

文:M&A Online編集部