公開日付:2018.09.10
9月7日、不正融資問題に揺れるスルガ銀行の第三者委員会(委員長:中村直人弁護士)は調査報告書を公表した。審査書類の改ざんや偽装に多くの行員が関与していたことを認定した上で、岡野光喜・代表取締役会長(7日付で辞任)ら一部役員の善管注意義務違反を認定した。
報告書では、シェアハウスを含む個人の不動産関連投資等に特化した「パーソナル・バンク」への業績依存により、審査が機能しなかったと断罪。シェアハウス向け融資では、スルガの一部行員と不動産業者の担当者に癒着があり、当該不動産業者を取引停止にしても、担当者が別法人を設立したり、ほかの不動産業者へ転籍し、「姿形を変えてスルガ銀行の前に現れてくる、いたちごっこの様相を呈してしまった」と結論付けた。 こうした状況は、「過大な業績目標の設定と達成のための過度なプレッシャー」が背景にあるとした。スルガの営業目標は、現場の意見を聴取しないトップダウン方式で作成され、現場の実態が勘案されない営業ノルマになっていたという。第三者委員会の聞き取りに対してスルガ行員は、「釣り堀に魚が10匹いないのに10匹とってこいといわれる状況」と無理難題への胸中を吐露している。
さらに、シェアハウス向け融資127件を抽出し積算法により担保価値を検証した結果、スルガが実施した収益還元法の評価と平均1.7倍の開きがあったという。スルガのシェアハウス関連融資は2018年3月末時点で2,035億円。10日、スルガ銀行は東京商工リサーチの取材に対し、「既にシェアハウス関連融資の全てで積算法による評価替えを実施しており、この点で追加損失を計上することはない。ただ、お客様(債務者)の資産背景やお申し出の状況に変化が生じた場合はこの限りではない」とコメント。さらに追加損失が発生する可能性を否定しなかった。