日産自動車<7201>のカルロス・ゴーン会長が自社経営陣からの内部告発で東京地検特捜部に逮捕された事件は、企業経営者にも衝撃を与えそうだ。逮捕容疑は自らの報酬を約50億円も過少に申告させた金融商品取引法違反だが、その他にも日産の子会社を通じて会社の資金を私的流用した疑惑もあるという。

コンプライアンスで「全く無傷」のワンマン経営者は少ない

しかし、こうした「不祥事」は世間でよく聞く話だ。事件にはならなくても大手企業で経営者の不正を糾弾する「怪文書」が出回ったり、ネットで書き込まれるという事態も決して珍しくない。ただ、これまでは「根拠がない怪文書」や「単なる誹謗中傷」で済んでいたものが、今回の事件で内部告発による「公権力の介入」という事態を招くことが明らかになった。

これまでも違法な長時間労働や残業代などの未払いなどで従業員が労働基準監督署に通報し、是正を求められるというケースはあった。しかし、それはあくまでも現場レベルの話。よほどのことでなければ、経営トップの首が飛ぶ話ではない。

有価証券報告書の虚偽記載はともかく、もう一つの嫌疑である会社経費の私的流用はグレーゾーンが多く、「私的流用は絶対にしていない」と断言できる経営者の方が少ないだろう。そうなれば、社内から具体的な証拠を持ち出されて内部告発される可能性があるということだ。

しかも、日本の大手企業の場合、逮捕されただけの容疑者の段階で解任されるケースがほとんど。捜査当局が介入した時点で、有罪・無罪にかかわらず経営トップは地位を失うことになる。仮に嫌疑不十分で不起訴になった、あるいは裁判で無罪判決を勝ち取っても、「クーデター」を起こした経営陣が新体制を確立してしまえば、大量の自社株を保有するオーナー経営者でもない限り復権は不可能だろう。

日本の大手企業では「逮捕された時点で社会的地位を失う」のが当たり前。