タカタ、日産自動車<7201>、神戸製鋼所<5406>・・次々に露呈する日本企業の不祥事については、世界中のメディアの関心も高い。特にCNNやブルームバーグは、相次いで、この問題の根幹にある日本企業の特質を論じ、そろって東京工業大学のエコノミスト(井上光太郎教授、池田直史助教授、大学院修了の渡部翔氏)の研究をとりあげた。

昨年秋に発表されたこの論文は、「平穏な生活追求仮説」(quiet-life hypothesis)―「株主からの圧力がないと、企業の経営陣は(リスクを伴う投資やM&Aといった)難しい決断を避け、組織をよどませ、停滞をもたらす」―という論理が、現在の日本企業にもあてはまるか検証するものである。

日本企業が陥る「平穏な生活追求仮説」

今年1月9日付のハーバードビジネスレビューの掲載記事(井上光太郎教授)を要約すると、「株式の相互持合いの下、日本企業は相手企業の株主として、利益を最大にするよう要求もしないし、会社の経営成績が悪くても反対の意を唱えたりはしない。自社と相手企業との良好な関係を損なわないようにするためである。」「この結果、経営陣は、株式市場の試練から隔絶され、凝り固まるため、巨額の投資、リストラ、M&A、R&Dといった重大な決断を避けるようになる。この点で、”平穏な生活追求仮説”は日本企業の現実に適合する。言い換えれば、競争や監視がない限り、経営者は困難な決断を先延ばしにする。ただし、経営陣が機関投資家や独立取締役に十分監視されている場合は別である。その際、彼らは難しい決断に対しても、よりアグレッシブに立ち向かう傾向がある。」と指摘している。

論文によると、2004-2014年にわたる東証のデータを基に、日本企業を株式持ち合い率が「特に高いグループ(全体の1/3)」と「その他のグループ」に分類し、株式持ち合いと安定株主が企業行動に及ぼす影響を比較分析した。その結果、株式持ち合い率が高い企業群が設備投資、M&A、R&Dにかける年間あたりの金額は、他の企業群に比べおよそ9%低いことが判明した。

ハーバードビジネスレビューでも指摘しているとおり、日本は数十年間、会社の低利益率、低経済成長と株式市場の低迷に苦しんできた。前例なく長期にわたる金融政策は経済の加速を狙ったものだったが、会社の設備投資は低迷を続けた。

「平穏な生活追求仮説」が成り立つかぎり、経営陣は閉塞的な殻を打ち破ろうとせず、株主も顧客も犠牲を強いられる。この研究は、開かれた市場からの的確な圧力が、企業の成長のために不可欠であることを証明するものであると言えよう。

東京工業大学 工学院-経営学系公式サイトより(2018.01.12)
在日米国大使館で講演した井上光太郎教授(右から2人目)、池田直史助教授(右)