日産自動車<7201>を倒産寸前のどん底から引き上げた「救世主」カルロス・ゴーン会長が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕された。逮捕のきっかけは日産からの内部通報であり、同社による「追放」といえる。

マクロン政権の「人気取り」に利用される日産

「3社連合」のうち仏ルノーを除く日産と三菱自動車<7211>は、ゴーン氏を近く解任する方針と伝えられている。数々の「ゴーン神話」で称賛された名経営者の、あっけない「追放」劇だった。だが、問題はゴーン氏を「追放」した後の日産がどうなるかだ。

3社連合を強力なリーダーシップでまとめてきたゴーン氏が「追放」されたことで、連合が揺らぐとの見方もある。しかし、そうはならないだろう。むしろ今回の事件でルノーの日産支配が一層強まる可能性が高い。なぜか。

ゴーン氏逮捕でルノーの日産支配がむしろ強化される?(Photo by Marco Verch)

理由はフランス政府の強い意向だ。エマニュエル・マクロン仏大統領は経済・産業・デジタル相時代から、日産とルノーの経営統合に意欲を燃やしていた。経営統合といえば聞こえは良いが、要はルノーによる日産併合、つまりは「植民地化」である。

経営統合にこだわるのは、ルノーよりも規模が大きく資金力がある日産による対仏投資だ。ルノーと完全統合した日産にフランス国内で新工場を建設させれば、雇用や税収の増加でフランス政府が潤う。

なにより政権が打ち出した燃料税引き上げに国民が反発し、28万人規模のデモが繰り広げられるなど、経済政策でケチがついているマクロン大統領にとっては格好の「点数稼ぎ」になる。

一方、日産にとってはフランスに工場を新設するなど、「悪夢」以外のなにものでもない。たたでさえ人件費が高いフランスで現地生産する意味などないのだ。むしろ日産の業績を悪化させる原因となる。

仮にフランスで日産車を生産するにしても、連合を組んでいるルノーの工場を活用する方がよいのは自明の理。日産がフランスに工場を新設して現地生産に乗り出すとしたら、「何のための連合なのか?」と日産株主から疑問の声が上がるのは間違いない。