現実とは異なる、首都電再生スキーム

-小説では、鷲津政彦が首都電力の買収に挑みますが、現実に起きたのは政府による東電の実質国有化でした。

私自身、国有化には反対で他の方法があったのではないかと考えていた。それを小説中では鷲津が実行に移す。あるエネルギー政策の専門家からは実際の東電処理のスキームとして最も適しており、目からウロコだと言われた。

もっとも、これは鷲津のルールに則っているだけのこと。瀕死状態の大手企業や名門企業を買いたたき、手中に収めた企業を再生して莫大な利益をあげてきた。鷲津にとって、首都電力でぼろ儲けができるという判断があった。

ー実際のところ、3.11後の東電買収を画策するようなファンド筋の動きはあったのでしょうか。 

それはない。あり得なかった。東電の株価は大きく下落し、負債が何兆円に及ぶのかも分からない状況で、手を挙げるファンドはどこにもない。

-テーマがテーマだけに、取材は大変ではなかったですか。

実はそれほど取材をしたわけではないが、協力をお願いした方からの拒否は皆無といっていい。これには正直驚いた。関係者を含めて様々な立場の人から協力を得た。

原発事故の時に東電や官邸で本当に何が起きていたのか、誰もが知りたかったからではないか。自分でいうのもおこがましいが、原発に偏見らしきものを持っていない真山であれば、事の核心を描いてくれるはずといった期待値の高さを感じた。

-鷲津がオーナーになった首都電力のその後の経営も気になりますが。

経営が動き始めると、(物語としては)地味になる。ハゲタカの本領は儲かる会社を買収すること。その後にフォーカスすると買った会社をどう売り抜けるかのパターンをいくつ提示できるかであり、既視感のあるものは意味がない。鷲津が首都電力を手放すことがあるとすれば、また儲けられると判断した時でしかない。シリーズの中で続きを気まぐれでやるかもしれないが、今はその気はない。