電力ほど儲かる事業はない

-本書では東電を連想させる「首都電力」に対し、主人公の鷲津政彦(ハゲタカ)が買収を仕掛け、政官財との迫真の攻防が続きます。

本来、電力事業ほど儲かるビジネスはない。電力の安定供給と引き換えに地域独占という特別待遇を与えられ、絶対に損をしない収益構造を持つからだ。一種の国策会社だけに、平時であれば、電力会社の買収は難攻不落といえるが、有事のあの時なら可能だと思った。

日本には電力会社が北海道から沖縄まで全国に10社ある。株式を上場する民間企業である限り、理屈上はだれでもオーナーになることができる。

-原発事故には日本中の関心が集まりましたが、電力会社の経営問題がクローズアップされることは少なかったように思います。

電力会社の社債(電力債)はリスクゼロといわれてきた。つぶれる心配がないのだから、リスクが顕在化するとは考えられていなかった。ところが、短期のCP(コマーシャルペーパー)すら発行できず、当座の資金繰りも行えない状況に陥った。しかも事故が発生したのは3月で、期越えの資金調達の見通しが全く立たなかった。東電の経営が本当に危なかったことを経済界は理解していたが、実は官邸はそこまで考える余裕がなかったようだ。

小説だからこそ、歪まず、確信的に書けることがある。鷲津政彦のアプローチから、読者の皆さんに2011年の日本が見えてきたのなら幸い。もちろん、批判があることも承知している。