近年、規模の大小を問わず、M&Aが盛んに行われています。M&Aが行われた際に多額ののれんが発生し、その償却費負担や減損損失の適用要否などが決算に大きな影響を与えることも少なくありません。

こうした会計上の影響もさることながら、のれんに関する税務上の処理がどうなるのかも気になるところです。のれんの償却を法人の損金として計上することはできるのでしょうか。本稿では、のれんの税務上の処理について概説したいと思います。

のれんはどのような場合に計上されるのか

会計上、のれんというのは、取得原価が受け入れた資産や引き受けた負債に配分された純額を上回る場合の超過額をいうものとされます(企業結合会計基準31項)。

例えば、吸収合併で引き継いだ資産が200、負債が150であれば純資産額は差額の50となりますが、この吸収合併の対価として70相当の株式を交付したのであれば、20(=70-50)がのれんになるという訳です。

どうして純資産額50を取得するために70相当の株式を交付したのかというと、純資産額を超えるだけの超過収益力なりシナジー効果なりの価値があると買い手(存続会社)が考えたからでしょう。

のれんの会計処理は?

このようにして資産に計上されたのれんは、20年以内の効果の及ぶ期間にわたって定額法その他合理的な方法により規則的に償却されることになっています。つまり、販売費および一般管理費などの費用になります。

逆に、対象会社を割安で取得した場合には、のれんが負債側に認識されます。これを「負ののれん」と呼んでいます。負ののれんが発生した場合は、発生した事業年度の特別利益として処理されます。つまり、その期で全額が利益として計上されることになります。

のれんの税務上の取扱は?

税務上、のれんに相当するものは「資産調整勘定」、負ののれんに相当するものは「差額負債調整勘定」と呼ばれています。基本的には、のれんと資産調整勘定、負ののれんと差額負債調整勘定は対応しているのですが、会計上と税務上の資産および負債には違いがあるため、その分、両者の間にはずれが生じます。

例えば、将来の役員退職金に備える役員退職慰労引当金は、会計上は引当時に費用処理して負債に計上されますが、税務上は損金にはならず負債としても認識されません。その分、会計上と税務上の純資産額には違いが生じ、ひいては取得原価と純資産額との差額であるのれん(負ののれん)と資産調整勘定(差額負債調整勘定)の違いとなります。