我が国の経済を支える中小企業の経営者が次世代経営者に円滑に事業を引き継ぐことが重要な課題として認識されています。こうした事業の引き継ぎを税制面において支援しているのが、事業承継時の贈与税や相続税の納税を猶予する事業承継税制です。

事業承継税制の創設以来、要件の見直しなどが適宜行われてきましたが、平成30年度税制改正ではより大胆な見直しが行われています。今回はすでに本年4月からスタートしている新たな事業承継税制の改正点および手続について解説したいと思います。

対象株式数と納税猶予の割合の見直し

これまでは事業承継税制の対象となる株式数には議決権株式総数の3分の2という上限が設けられていました。また、納税猶予割合も相続税では80%と限定されたものでした。つまり、これらの制限があることにより実際に納税が猶予される割合は53%(=80%×3分の2)程度に過ぎませんでした。

平成30年度税制改正では、まず対象株式の上限が撤廃され、議決権株式のすべてが対象とされました。また、納税猶予割合も贈与税だけでなく相続税においても100%とされたため、結果として贈与税や相続税にかかる金銭負担が実質的にゼロとなりました。これは本改正の中でも特に大盤振る舞いの見直しといえるでしょう。

8割の雇用要件が実質不問に

従来は事業承継が行われた後の5年間平均で従業員数の8割の雇用を維持することが求められていました。仮に8割の雇用を維持できなかった場合には納税猶予されていた贈与税や相続税を全額納付する必要ありました。これは中小企業にとっては高いハードルであり、事業承継税制の利用を躊躇する要因ともなっていました。

今回の改正では雇用の8割を維持できなくなった場合でも直ちに納税猶予が打ち切られることがなくなりました。仮に雇用の8割が維持できなくなった場合には理由の報告が求められるほか、その理由が経営悪化または正当なものと認められない場合には認定支援機関(経営革新等支援機関)の指導・助言を受けることが必要となります。これは実質的に雇用の8割要件が撤廃されたものと評することができます。