税務:株式譲渡契約上の価格調整条項に関する裁決例

 国税不服審判所は、2017年2月2日、株式譲渡契約上いわゆる価格調整条項が設けられている場合の収入時期について重要な判断を行いました。

 事案の内容は以下のとおりです。X(個人、売主)は、2013年にその保有していた非上場会社T社の株式を譲渡しましたが、その際の株式譲渡契約においては、譲渡代金の一部について、A社の将来におけるEBITDA業績値に応じて算出される金額(調整金額)を譲渡後に支払う旨の条項(本価格調整条項)が置かれていました。そこで、Xは、調整金額を株式等に係る譲渡所得の収入金額に含めずに2013年分の所得税等の確定申告を行い、その後、本価格調整条項に基づく業績要件を満たし、2014年、2015年に調整金額を受け取った後、調整金額を2013年の収入金額に加算する修正申告を行いました。そうしたところ、課税庁は、「Xは、調整金額も含めた譲渡代金を一括して収入金額であったとして計上すべきであった」として課税処分を行ったため、Xがそれに対して不服申し立てを行いました。

 国税不服審判所は、①本価格調整条項が、急成長を遂げているT社の好調な経営状態を踏まえて設定されたものであること、②X等が株式譲渡実行後も役員として残り、本価格調整条項は役員に対するインセンティブとなること、③ある事業年度において計画値を達成できず、調整金額の満額が支払われないとしても、その後の事業年度において計画値以上の業績を上げた場合には、過去の未達分が埋め合わせられることとされていたこと、④他のT社株主との間の株式譲渡契約書には本価格調整条項のような条項はなかったことからすれば、本価格調整条項は、基本的には調整金額が満額支払われることが想定されていたとみるべきであり、したがって、2013年において収入すべき金額は、調整金額を含む譲渡代金全額であるとしました。

 一般に債権に業績条件等の条件が付されている場合には、その条件の成就の際に権利が確定したとして収入を認識すると考えられます。本件は、その条件が実質的に条件として機能していたか否か(成就することが初めから想定されていたのか否か)に着目して判断がなされた点に特殊性があると考えられます。本件は個人の所得税に関する事案ですが、収入時期に関する判断は基本的に法人税においても同様であるため、法人税の文脈においても重要な意味を持っと考えられます。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 山川 佳子

文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2018/9 vol.57より転載