日本企業が海外M&Aを行った際、PMI(Post Merger Integration)の一環として、ペーパーカンパニーなどを解散してグループの整理を実施することが考えられます。ところが、海外子会社を利用した租税回避を防止することを目的としたタックスヘイブン対策税制が適用されると、そのようなグループの整理を行う際に発生した株式譲渡益まで日本企業の所得に合算して課税がなされる可能性がありました。

租税回避の目的がないにもかかわらず、厳格な課税がなされると健全な企業グループの再編を阻害することにもなりかねません。そこで平成30年度税制改正においては、一定の要件を満たす株式譲渡益については課税対象としないという特例が定められました。以下では、タックスヘイブン対策税制とはどのような仕組みであり、平成30年度税制改正で何が変わったのかを紹介したいと思います。

タックスヘイブンとは?

2016年4月にパナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した「パナマ文書」が公開され、タックスヘイブンという言葉が脚光を浴びました。その翌年にも、各国の要人がタックスヘイブンを利用していることを示す「パラダイス文書」が公開されるなど話題を集めました。

タックスヘイブンは一般に「租税回避地」などと訳されます。法人税や所得税、資産税などの税率が低い、あるいはまったく課税されない国や地域を指しています。こうした国や地域が存在すると、本国での課税を回避するためにあえてタックスヘイブンに子会社を設立するような行為も行われます。

例えば、タックスヘイブン国に子会社を設立し、税率が高い本国の親会社ではなるべく所得を抑えるとともに、子会社で所得を発生させ、グループ全体の税金支払額を少なくすることが考えられます。このような行為は必ずしも法律に反していない場合も多く、「脱税」とは区別して「租税回避行為」と呼ばれています。

タックスヘイブン対策税制とは?

各国の税務当局もこのような状況に対して手をこまねいている訳ではなく、OECDの「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」などを中心に国際課税のルールを強化してきました。

タックスヘイブンを利用した租税回避を防ぐためのもっとも基本的な仕組みが「タックスヘイブン対策税制」です。その内容は低税率の海外子会社で生じた所得を本国親会社などの所得に合算して課税するというものです。そのためタックスヘイブン対策税制は「外国子会社合算課税」あるいは「CFC(Controlled Foreign Company)税制」とも呼ばれます。

従来、タックスヘイブン対策税制が適用されるかどうかの判定基準として「トリガー税率」がありました。トリガーとは銃の引き金を意味します。例えば、海外子会社の租税負担割合が25%以下というトリガーに抵触すればタックスヘイブン税制が発動するといった具合です。

トリガー税率は平成22年度税制改正で25%以下から20%以下へと、平成27年度税制改正で20%以下から20%未満へと変更されてきました。