連結納税とグループ法人税制は親類だった!

M&Aに関連する税制としては「連結納税」以外に「グループ法人税制」、「組織再編税制」などがあります。これら3つの税制は名称の雰囲気が似ていることも手伝い、混同される場合があります。以下では、どのような形態のM&Aでこれらの税制が適用されるのか、その違いを明らかにしてみましょう。

「連結納税」「グループ法人税制」「組織再編税制」とは?

「連結納税」は、以前の記事でも紹介したように、親法人や子法人を含む連結グループの所得を通算できる制度です。連結納税を開始する前にすでに発生している繰越欠損金も一定の条件を満たさせば引き継ぐことができます。

「グループ法人税制」は、完全支配関係すなわち100%グループ内における資産の譲渡損益を繰り延べたり、寄附金や受贈益をそれぞれ損金や益金から除外したり、受取配当金を益金不算入とする制度です。グループ法人税制は平成22年税制改正により導入されました。

「組織再編税制」は、通常であれば資産が移転する際に発生する譲渡損益や時価評価損益に対する課税について、100%支配関係のある法人間で行う一定の組織再編成(合併会社分割現物出資、現物分配、株式交換株式移転)などに限っては繰り延べを認める制度です。

「連結納税」は、適用を受けたい場合に連結親法人の納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に承認申請書を提出することによって適用を受けることができます。これに対して、「グループ法人税制」と「組織再編税制」は、該当する状況にある場合には強制的に適用されるという違いがあります。

M&Aのタイプと「連結納税」「グループ法人税制」「組織再編税制」

●現金による株式取得の場合

買収タイプのM&Aの典型は、対象会社の株式を現金で取得するケースです。現金による買収で100%親子会社関係が生じると、「連結納税」や「グループ法人税制」が登場する場面となります。

上述のように、「連結納税」は承認申請を出すことで任意に適用を受けることができるのに対して、「グループ法人税制」は100%親子会社関係が生じると強制的に適用となります。

一方、「組織再編税制」は、合併会社分割現物出資、現物分配、株式交換株式移転という組織再編成の際に適用されるものですので、現金を対価とする株式取得の際は対象となりません。

ただし、買収により100%親子会社関係ができた後に、その親子会社間で上記のような組織再編成が行われた場合には「組織再編税制」の登場となりますので無関係というわけでもありません。

合併の場合

合併が行われた場合、それが適格合併に該当すれば「組織再編税制」により資産の時価評価を行わなくて済みます。適格合併というのは、法人税などで定める要件に合致する合併を意味します。典型的なものとしては、100%の親子会社関係にある会社同士が合併するケースが挙げられます。

非適格合併の場合には、合併の処理の一環として被合併会社の資産を時価評価することになります。つまり、含み益のある資産があれば合併時に時価評価され、課税が生じてしまいます。ところが、適格合併の場合には、被合併会社の資産を従来の帳簿価額のまま引き継ぐことができるため、合併時に課税されることはありません。

なお、100%親子会社間の合併だけでなく、50%超の持分関係のある会社間で行われた合併で従業員の引継ぎや事業の継続など一定の要件を満たしている場合は適格合併に該当します。また、合併以外の組織再編についても、同様の要件を検討することにより適格組織再編あるいは非適格組織再編の判定をすることになります。

連結納税していなくてもグループ法人税制は適用される

●連結納税とグループ法人税制が似ている点

「連結納税」を開始するときや新たな加入が生じるときには、資産の時価評価が必要とされます。一方で、「グループ法人税制」においては100%親子会社間の資産の譲渡損益が繰り延べられます。

両者は別の制度であるものの、時価評価や譲渡損益繰り延べの対象となる資産はいずれの場合も、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権、繰延資産となっている点で共通しています。

また、有価証券から売買目的有価証券が除かれている点や帳簿価額が1,000万円未満の資産が除かれている点でも共通しています。なお、帳簿価額が1,000万円未満の資産を除く規定は従来の「連結納税」にはありませんでしたが、平成29年度税制改正で追加されることになりました。

以前は「連結納税」の開始あるいは加入時に自己創設営業権のれん)を時価評価する必要がありました。しかし、評価方法などが不明確で実務上問題となることもありました。帳簿価額が1,000万円未満の資産を除く規定の新設により、もともと会計上は認識されない自己創設営業権のれん)には帳簿価額がないため、時価評価しなくてよいことが明確になったのです。

●グループ法人税制で注意すべきこと

グループ法人税制は、連結納税のように自ら適用を選択するものではなく、100%親子会社関係があれば強制適用されるものです。そのため、資産の譲渡などの取引を行う際にはグループ法人税制による影響に十分注意しておかなければなりません。

たとえば、本社名義で購入した生産設備を製造子会社に譲渡したり、子会社が保有する遊休不動産をグループ内の資産管理会社に売却したりするなど通常生じるような取引であっても、税務上は譲渡損益を加減算するという処理が必要となります。

平成29年12月14日、与党が平成30年度税制改正大綱を公表しました。そこには、組織再編税制に関連する項目も含まれています。こうした動向については、また日を改めてお伝えできれば思います。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)/M&A Online編集部