自社株を使った買収が進まない背景とは

欧米では大規模買収の対価として、株式が用いられることが珍しくない。しかし日本では、自社株を対価とするTOBの活用が期待されるものの、これまでの実例は皆無に近い。これは、売り手にとっても買い手にとっても次のようなデメリットや懸念があったためである。

図2 TOBによるM&Aにおける使用対価の国際比較

TOBによるM&Aにおける使用対価の国際比較
出典:経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」

すなわち対象会社の株主(売り手)が、買収会社の自社株式を対価とする買収に応じた場合、株式交換でない限り、対象会社株式の譲渡益に対して課税されてしまう。したがって当該課税の納税資金確保のため、対価として受取った買収会社の株式の一部を売却せざるを得ない。買い手側にとっても、買収後に、売り手が自社の株式を売却することが予め見込まれるため、株価の下落リスクを伴うからだ。

期待されるM&A市場の活発化

今回の改正により、次の効果が予想され、ひいては経済の活発化につながることが期待される。

1)将来の成長を期待できるベンチャー企業が買収を行いやすくなり、M&Aが増加する
2)銀行借り入れでの資金調達に制約がある場合でも買収が可能となる
3)買収による現金流出がないため、手元資金を有効に活用できる
4)売り手である譲渡会社は買収企業の株主となるため、買収後も売り手がM&Aのシナジーを享受できる。この結果、売り手にもM&A後の企業価値に対する関心とインセンティブが生じ、協働での企業価値向上が期待できる