【M&Aインサイト】M&Aに関する役員の善管注意義務違反を否定した裁判例
森・濱田松本法律相談事務所の「Client Alert」のM&AOnlineでの配信3回目は、株式取得時の取締役及び監査役らに対しての善管注意義務違反とそれを否定する旨の判決例を紹介する。
平成28年4月より、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)の改正法が施行されました。今回の主な改正に「遺留分に関する民法の特例」がありますので、その内容を確認したいと思います。
◆ 経営承継円滑化法の遺留分に関する民法特例とは
中小企業の事業承継において、現在の経営者から後継者へ自社株式を集中して承継させようとすると、遺留分が問題になることがあります。
例えば、現経営者である父親が生前贈与や遺言によって後継者である長男に自社株式を集中して承継させた場合、遺留分を侵害された他の推定相続人は長男に対して遺留分に相当する財産の返還を求めることができます。
その結果、自社株式が分散してしまい、事業承継にとって大きなマイナスになることがあります。このような問題に対処するため、経営承継円滑化法は「遺留分に関する民法の特例」を規定しています。
◆ 遺留分に関する民法特例合意の内容
現経営者の推定相続人全員の合意により、現経営者から後継者へ贈与等された自社株式について、次のとおり遺留分の算定に係る合意を行うことができます。
(1) 除外合意
後継者が贈与等を受けた株式を遺留分算定基礎財産から「除外」する合意。これにより、後継者が取得した自社株式について他の相続人は遺留分の主張ができなくなるため、相続に伴う自社株式の分散を防止することができます。
(2) 固定合意
後継者が贈与を受けた株式について、遺留分算定基礎財産に算入する評価額を合意時の価額で「固定」する合意。これにより、後継者への自社株式承継後に自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないため、後継者は相続時に想定外の遺留分の主張を受けることがなくなります。
なお、(1)(2)を組み合わせることも可能です。
◆ 親族以外の後継者についても利用可能に
改正前は民法特例制度の利用にあたり、後継者が現経営者の推定相続人である必要がありましたが、改正により後継者の推定相続人要件がなくなりました。
今後は、現経営者の推定相続人全員及び後継者で合意すれば、親族外の事業承継においても民法特例制度が利用できるようになります。改正の背景には、事業承継の形態が多様化し、親族外承継の割合が増加していることがあります。
民法特例制度がより多く利用され、円滑な事業承継が行われるよう期待したいところです。
文:司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所 メルマガ Vol.106 2016.04.28より転載
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