現金を対価として少数株主を締め出すキャッシュ・アウトを実施した場合、少数株主側としては、所定の要件のもとで可能となる価格決定の申立てを行うことで、裁判所に対し、キャッシュ・アウトの対象となる株式の公正な価格について判断を求めることができます(会社法117条、172条、182条の5等)。

 価格決定申立ての手続きは、訴訟事件ではなく、非訟事件として手続きが進行しますが、2013年に制定された非訟事件手続法では、文書提出命令が非訟事件にも適用のあることが明示的に定められました(非訟事件手続法53条)。会社が所持する株価算定資料等の重要な資料については、裁判所から提出が促され、提出をしない場合に会社側に不利益に斟酌されるおそれがあるため、取引実行時の段階から、裁判所への提出を視野に入れた対応(例えば、株価算定書等の第三者が作成した資料については、裁判所に提出されることにつきあらかじめ当該第三者の承諾を得ておくこと等)をとる必要性が高まったといえます。

 また、2015年5月1日に改正会社法が施行され、現金を対価として少数株主を締め出すキャッシュ・アウト手法として新たに株式等売渡請求の制度が創設されました。株式等売渡請求においても売買価格の決定の申立てをすることができることとされていますが(会社法179条の8)、株式等売渡請求では、全部取得条項、株式併合、株式交換等の方法によるキャッシュ・アウトとは異なり、対象会社は取引の当事者ではなく、 実質的な取引当事者は買収者(特別支配株主)となります。そのため、価格決定申立ての手続きにおいても、対象会社ではなく、買収者(特別支配株主)が所持する資料(株価算定資料、買付価格の検討資料等)の提出の可否が取りざたされる可能性が高まったという点は、従前のキャッシュ・アウト手法とは異なる側面であり、留意しておく必要があると思われます。


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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2015年10月号Vol.22より転載