2015年5月1日に改正会社法が施行され、現金を対価として少数株主を締め出すキャッシュ・アウト手法として株式等売渡請求の制度が創設されるとともに、株式併合及び全部取得条項付種類株式をキャッシュ・アウト手法として用いることを念頭に置いた制度改正(事前備置書類及び事後備置書類の作成義務等)がなされました。

 2015年5月又は6月に公開買付届出書が提出された、完全子会社化を企図した公開買付けでは、5事例のうち3事例において、公開買付け後のキャッシュ・アウト手法として、公開買付けにより総議決権の90%以上を取得した場合には株式等売渡請求を用い、総議決権の90%未満の取得にとどまった場合には株式併合を用いることとしています。

 株式等売渡請求は、キャッシュ・アウトの完了までの期間が短く、新株予約権も売渡しの対象とすることができること等から、キャッシュ・アウト手法としてまず第一の選択肢に入ると考えられます。株式等売渡請求が利用できない場合における全部取得条項付種類株式を用いた手法と株式併合の手法とを比較してみると、全部取得条項付種類株式を用いた手法では、株式併合の手法と異なり、①価格決定申立て又は株式買取請求権の行使を行う株主数によっては少数株主に交付する1株未満の端数の合計数が1株未満となってしまう可能性があり、端数処理手続が法的に不安定となりかねない点(会社法234条1項参照)や、②税務上、株式買取請求権を行使した株主にはみなし配当課税がなされる可能性があることから(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)、みなし配当の受取配当益金不算入制度(法人税法23条)を活用すべく、先行する公開買付けに対する法人株主の応募率が下がるのではないかとの懸念が生じうる点を指摘することができます。

 キャッシュ・アウトの手法の選択には、上記の他にも様々な要素を考慮した上で決定することとなりますが、今後は近時の事例でも見られるように株式等売渡請求又は株式併合の手法を利用した事例が増えてくることが想定されます。

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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2015年7月号Vol.19より転載