【M&Aインサイト】2016 年ISS 議決権行使助言方針における買収防衛策基準の厳格化
森・濱田松本法律事務所が配信する「Client Alert」より。今回は、ISS 議決権行使助言方針における買収防衛策基準の厳格化をテーマに取り上げる。
東京地裁は、2015年10月8日、環境事業のベンチャー企業である A社及び不動産事業を営む B社(いずれもその後経営破綻)の株式を取得した C社の株主が、当該株式取得時の取締役及び監査役らに対して、善管注意義務違反があった等として C社に対する損害賠償を求めた株主代表訴訟において、被告役員らの善管注意義務違反を否定する旨の判決を言い渡しました。
東京地裁は、取締役について経営判断の原則に基づく判断基準を採用した上で、①A社の株式取得(第三者割当増資)については、ベンチャー企業への投資が不確実な将来の経営状況等の予測に基づくものにならざるを得ない点も考慮して検討するとして、A社の計算書類等の調査やヒアリング内容等を前提に今後の売上げ・利益を見込んでいること、環境事業の成長に期待することは合理的であること、社内手続を履践していること等を考慮し、また、②3度にわたる B 社の株式取得(第三者割当増資及び株式譲受)については、事業上の関係を強化してシナジー効果を享受するという目的、その当時のB 社の財務状況を踏まえた専門家の意見状況、社内手続の履践状況等を総合的に考慮し、いずれについても取締役の判断は著しく不合理とはいえず、善管注意義務に違反しないとしました。特に 3 度目の B 社の株式取得(第三者割当増資)については、その時点でB 社の経営破綻の危険があったことは否定できないとしつつ、取締役会決議事項でないにもかかわらずこれを経た慎重な社内手続を履践していること等を考慮して、取締役の判断は著しく不合理とはいえないとしています。
本判決は、事例判断ではあるものの、M&A に関する取締役の判断過程、内容の合理性を判断するための考慮要素を示したものとして、実務上参考になると思われます。
弁護士 大石 篤史
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弁護士 徳田 安崇
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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2016年1月号 Vol.25より転載
森・濱田松本法律事務所が配信する「Client Alert」より。今回は、ISS 議決権行使助言方針における買収防衛策基準の厳格化をテーマに取り上げる。