米国においては、公開買付けと現金対価の合併によるキャッシュ・アウトを組み合わせたいわゆる二段階買収の手法により対象会社を買収する際に、対象会社から、買収者に対し、公開買付け後の買収者の議決権保有割合が(略式合併の要件である)90%に不足する場合に当該不足分の株式を取得することができるという、トップ・アップ・オプション(top-up option)と呼ばれる権利を事前に付与することが実務的に広く行われていました。
わが国においては、従前、このトップ・アップ・オプションに注目が集まることは多くありませんでした。しかし、2015 年 5月から施行された改正会社法において設けられた株式等売渡請求の制度では、その利用要件として、買収者に総株主の議決権の90%以上という議決権保有要件が課されているため、わが国においても、二段階買収に際してトップ・アップ・オプションを用いることができないかという点に関心が高まっています。
もっとも、トップ・アップ・オプションについては、90%以上という議決権保有要件の潜脱にならないか、株式・新株予約権の不公正発行に該当しないか、先行公開買付けに関して強圧性や買付価格の引き下げ効果を生じさせないか等、法律上の論点が複数存在するところです。わが国におけるトップ・アップ・オプションの導入に向け、これらの論点に関する今後の議論の進展に注目する必要があるといえます。
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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2015年11月号Vol.23より転載