NEXT STORY
【昭和電工】巨額買収で、化学の「川上から川下」までをカバー
2019年12月、昭和電工が日立グループの「御三家」の一つである日立化成をTOBで買収すると発表したのだ。昭和電工は売上高や利益では日立化成を上回るが、発表時点での時価総額や従業員数でみれば半分ほど。「小が大を飲む買収」が行き着く先は?
昭和電工<4004>の子会社昭光通商<8090>がTOBで上場廃止となる見込みです。買収を仕掛けたのは丸紅<8002>傘下の投資ファンド「アイ・シグマ・キャピタル」(千代田区)です。昭和電工は28.89%分の昭光通商株をTOBに応募し、連結対象から外れます。アイ・シグマ・キャピタルは昭光通商を丸紅グループに統合することにより、経営の効率化が図れるとしています。
アイ・シグマ・キャピタルは2008年に135億円の1号ファンド、2013年に203億円の2号ファンド、2019年に318億円の3号ファンドを立ち上げました。5大商社の一つ丸紅の広範なネットワークを生かして案件を獲得し、老舗からベンチャーまで旺盛な勢いで取り込むアイ・シグマ・キャピタルとはどのような会社なのでしょうか。
この記事では以下の情報が得られます。
・アイ・シグマ・キャピタルの概要、業績推移、投資先
・昭光通商を買収した理由
アイ・シグマ・キャピタルは、日本の独立系投資ファンドの先駆けとなったアドバンテッジパートナーズ(港区)が丸紅と共同で国内初のバイアウトファンド「MBIファンド」1号を1997年に立ち上げたことが、誕生のきっかけとなりました。
このとき、アドバンテッジの創業者である笹沼泰助氏とリチャード・フォルソム氏の提案に対して、丸紅はゼネラル・パートナー(GP)、リミテッド・パートナー(LP)として出資することを決めました。これが軌道に乗ったことで2000年に両社共同でMBIファンド2号を立ち上げます。
同時期に丸紅はベンチャーキャピタルファンド1号を組成しました。そして、丸紅の100%子会社としてアイ・シグマ・キャピタルが設立されます。
1990年代後半から2000年代にかけては銀行の不良債権処理が加速し、再生ファンドが大活躍した時代です。更にIT革命と呼ばれる時期が近付いており、1996年にオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)、1997年にエム・ディー・エム(後の楽天)、1999年にイー・マーキュリー(後のミクシィ)などの先進的な会社が次々と誕生していました。
アイ・シグマ・キャピタルは、日本のバブル崩壊とIT革命のはざまで生まれた商社系ファンドとして、ベンチャー投資から再生ファンドまで、幅広い案件を手掛けています。同社のような商社系ファンドのベンチャー投資は、エグジット目的のベンチャーキャピタルとしてだけではなく、本業との相乗効果を得る目的で運用するコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の両方の性格を持っていることになります。
1997年 | ・アドバンテッジパートナーズと丸紅が共同で国内初のバイアウトファンド「MBIファンド」1号を立上げ |
2000年 | ・MBIファンド2号をアドバンテッジパートナーズと丸紅が共同で立上げ ・丸紅が、丸紅ベンチャーキャピタルファンド1号を立上げ ・アイ・シグマ・キャピタル設立 |
2003年 | ・旧UFJ銀行等と丸紅が共同で企業再生ファンド「シナジー・キャピタル」を立上げ ・MBIファンド3号をアドバンテッジパートナーズと丸紅が共同で立上げ |
2004年 | ・中国国際信託投資公司(CITIC)、 住友信託銀行、新生銀行と丸紅が共同で、中国に進出する日本企業を支援するバイアウトファンド「CITIC Japan Partners」(約170億円)を立上げ ・アイ・シグマ東京ベンチャーファンド1号の設立 |
2006年 | ・バイアウトファンド運営関連業務を丸紅からアイ・シグマ・キャピタルに移管 |
2008年 | ・アイ・シグマ事業支援ファンド1号(135億円)を立上げ |
2013年 | ・アイ・シグマ事業支援ファンド2号(203億円)を立上げ |
2019年 | ・アイ・シグマ事業支援ファンド3号(318億円)を立上げ |
※ホームページをもとに筆者作成
アイ・シグマ・キャピタルは投資実行後の支援にも特色があります。経営戦略や事業推進支援を行うのは他のファンドと同じですが、丸紅のネットワークを活かして国内の商流構築ができます。また、海外からの資材調達や海外の販売拠点も設立でき、世界展開の足掛かりを得ることもできるのです。
投資をする条件として企業価値が200億円、出資規模が75億円を上限として設定しています。独立系投資ファンドは外食・小売り系企業が比較的多くなりがちですが、アイ・シグマ・キャピタルは、どちらかというと製造・販売業の比重が高い印象です。
〇アイ・シグマ事業支援ファンド1号
投資時期 | 会社名 | 事業内容 | 現状 |
2009年3月 | 株式会社 スイートスタイル | ベーカリー・カフェ事業(麻布十番モンタボー、元町珈琲) | 譲渡済 |
2009年12月 | 株式会社 寿製作所 | 医療機関向け特定サービスのアウトソーシング受託事業 | 譲渡済 |
2011年1月 | ゴールドパック 株式会社 | 清涼飲料及び原料果汁・野菜汁等の製造販売 | 譲渡済 |
2012年3月 | 株式会社 マオス/株式会社 新総企 | コインパーキング事業 | 譲渡済 |
2013年4月 | プレミアファイナンシャルサービス 株式会社 | オートクレジットおよびワランティ(中古車車両部位保証)事業 | 譲渡済 |
〇アイ・シグマ事業支援ファンド2号
投資時期 | 会社名 | 事業内容 | 現状 |
2013年9月 | 株式会社 飯野ホールディング | 自動車部品製造業 | 譲渡済 |
2015年4月 | 合同会社 コーケンホールディング | 重防食塗装・補修工事等 | 譲渡済 |
2016年6月 | バリオセキュア 株式会社 | マネージドセキュリティー事業、セキュリティー機器販売事業 | 継続支援中 |
2016年7月 | 株式会社 京都セミコンダクター | 光半導体デバイスの開発・製造 | 継続支援中 |
2016年7月 | 株式会社 日東コーン・アルム | 冷凍ケーキを中心とした菓子類の製造 | 譲渡済 |
2018年3月 | 株式会社 ショクカイ | 食品卸売 | 継続支援中 |
2018年3月 | 株式会社 ミスズライフ | ぶなしめじ生産・販売 | 継続支援中 |
〇アイ・シグマ事業支援ファンド3号
投資時期 | 会社名 | 事業内容 | 現状 |
2019年10月 | ミニター 株式会社 | 電動マイクログラインダー等の製造販売・仕入販売 | 継続支援中 |
2019年8月 | 株式会社 和コーポレーション | 金属加工業、各種産業装置製造業 | 継続支援中 |
※ホームページより引用
ベンチャー企業には、ソーシャルレンディングのマネオ(品川区)、アフィリエイトネットワークのバリューコマース(港区)、金融機関向けのシステム開発を行うキャピタル・アセット・プランニング(大阪市)などに投資をしています。
アイ・シグマ・キャピタルの業績は堅調に推移しています。
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |
純利益 | 1億3,600万円 | 4億1,900万円 | 5億2,800万円 |
※決算公告より筆者作成
しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。
2019年12月、昭和電工が日立グループの「御三家」の一つである日立化成をTOBで買収すると発表したのだ。昭和電工は売上高や利益では日立化成を上回るが、発表時点での時価総額や従業員数でみれば半分ほど。「小が大を飲む買収」が行き着く先は?