投資ファンド「アント・キャピタル・パートナーズ」(東京都千代田区)が1月31日に電車・バスなどの交通機関向け各種電気機器を開発する交通電業社(大阪市)を買収しました。交通電業社は1947年の老舗企業で、東日本最大のバス業者神奈川中央交通<9081>などに表示機器を提供しています。

買収したアント・キャピタルは2000年創業のプライベート・エクイティ・ファンドで、国内外の中堅企業を投資対象としています。2013年に「ビアードパパのシュークリーム」を運営する麦の穂ホールディングス(大阪市)を永谷園ホールディングス<2899>に売却して一躍知名度を上げました。2019年1月には、うどん・そば店「銀座 木屋」を運営する木屋フーズ(東京都品川区)を、クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>に売却。2017年3月に買収した木屋フーズのエグジットに成功しました。

製造業や外食、サービス業を中心に活躍するアント・キャピタル・パートナーズとはどのような会社なのでしょうか。

この記事では、以下の情報が得られます。

・アント・キャピタル・パートナーズの概要
・投資実績
・ファンドの強み                               

1814億円のファンドを運用するアントキャピタル

本間ゴルフ、ゴルフパートナーなどゴルフ用品関連企業に投資実績があるアント・キャピタル(画像はイメージ Photo by PAKUTASO)

アント・キャピタルは、日興証券の投資部門を切り離した日興プリンシパル・インベストメンツと、英アントファクトリー・ホールディングス・リミテッドとの合弁により、2000年10月に誕生したアントファクトリージャパンが前身。2008年11月に農林中央金庫と三菱商事<8058>の出資を受け入れ、アント・キャピタル・パートナーズへと社名を変更しました。2018年4月にファンド・マネージメント・サービス(東京都千代田区)を吸収合併しています。この年に株主構成が変更となり、役員が50.1%、農林中央金庫24.95%、三井物産企業投資が24.95%となりました。

社長は2001年に入社した飯沼良介氏。飯沼氏は1994年に三菱商事に入社し、海外のソフトウエアベンダーの国内市場開拓に携わっていました。入社後は、出資先のゴルフパートナー取締役などに就任してハンズオン支援を実行。経営戦略サポートをしています。グループの役職員数は現時点で46人です。現時点で1814億円を運用しています。

投資先は多岐に渡ります。

〇プライベート・エクイティ投資実績(セカンダリー投資は含まず)

参画年企業名事業内容Exit譲受した背景とその後
2019年8月 アミノ 回転寿司店の運営   事業承継
2019年4月 アントレ 求人メディアの運営   リクルートからの独立を目的としたカーブアウト
2018年12月 フェニックスインターナショナル アパレル製品の企画・製造・販売   経営陣のMBO支援
2017年12月 スプラウトインベストメント 地魚・純米酒・活イカなどの外食事業   創業社長より事業承継
2017年10月 ニューオークボ 生パスタ専門店の運営   事業承継ニーズで資本参加
2016年3月 マルサヤ 鰹節の製造販売   創業社長より事業承継
2016年1月 アロスワングループ 調剤薬局運営 完了 阪神調剤ホールディングと共同で調剤薬局のM&Aを専門に手掛ける会社アロスワンを設立
2015年6月 マルホン 木質建材の輸入・企画・製造・販売   創業社長より事業承継
2014年11月 壮関 おつまみ、海産珍味の製造販売   創業社長より事業承継
2014年7月 アップルワールド ホテル予約サイト運営 完了 創業社長より事業承継。2018年2月に株式会社じげんへ売却
2013年10月 ムーンスター 大手靴製造・卸 完了 経営陣のMBO支援
2013年9月 Casa 家賃保証サービス 完了 経営陣のMBO支援。2017年10月に東証2部に上場
2009年12月 藤二誠 観光土産などの製造販売 完了 事業承継ニーズに応じて資本参加。2014年3月に全日空商事へ売却
2009年9月 バリオセキュア・ネットワークス インターネットセキュリティーサービスプロバイダー 完了 事業承継案件としてTOBを行い資本参加。2011年3月に1stホールディングス株式会社に譲渡。
2009年5月 ジャパンバイクオークション 二輪車オークション運営管理 完了 資本参加。2011年4月にアイケイコーポレーション(現バイク王&カンパニー)およびユー・エス・エスに売却
2008年6月 丸星 自動車・機械製品等の技術文書の制作・編集 完了 20011年1月に同業のシイエム・シイへ売却
2007年1月 ジャパン・リリーフ 自動車の管理、運転、整備、修理の請負 完了 事業承継案件として譲受。2008年10月に株式会社ゼロへ売却
2006年8月 麦の穂ホールディングス 「ビアードパパのシュークリーム」運営 完了 事業承継ニーズに応じて資本参加。2013年11月に永谷園へ売却
2006年3月 本間ゴルフ ゴルフ用品の製造販売 完了 民事再生案件スポンサーとして参画。2010年6月に保有分の75%を中国の事業家集団に売却、2011年8月に本間ゴルフ(上海)有限公司へ売却
2005年10月 アントステラ 「ステラおばさんのクッキー」を展開 完了 事業承継案件として資本参加。2008年1月に森永製菓に売却
2005年9月 menue(現ビークリー) 「まんが王国」の展開 完了 親会社に資本参加。2009年6月小学館などに一部売却後、2014年2月にリサ・パートナーズが運用するファンドに売却
2005年7月 ウイルプラスホールディングス フィアットクライスラー、BMWジャパンの正規ディーラー 完了 成長支援のため資本参加。IPOを目指すため、2012年12月にVCおよび事業会社に譲渡
2005年7月 トライウォール 梱包用段ボールの製造 完了 資本参加。2010年7月にCITIC CAPITALへ売却
2005年6月 ミヤノ(現シチズンマシナリーミヤノ) 中型工作機械の製造販売 完了 産業再生機構の保有株式を一部取得。2007年1月に東証2部に上場後、シチズンホールディングスに売却
2004年12月 マイプリント 年賀状・婚礼関連の印刷サービス業 完了 業績悪化のため大手商社、外資投資銀行と共同スポンサーに。2007年10月に株式会社アサガミへ売却
2004年4月 ゴルフパートナー 中古ゴルフ用品販売 完了 事業会社の子会社売却による資本参加。2008年10月にゼビオが実施するTOBに応じて売却
2004年4月 チェッカーモータース アルファロメオ、フィアットの国内販売 完了 業績不振によるオーナーの売却。2008年7月にウイルプラスHDへ保有株式の一部を売却残りを株式交換で同社株式取得。2012年12月にウィルプラスHD株をVCおよび事業会社へ売却
2004年3月 ハイパーフィットネス フィットネスジムの運営 完了 スピンオフ支援による資本参加。2009年9月にVCへ売却
2002年10月 CAA(シーエーエー) 中古車オートオークション会場の運営 完了 業界再編のパートナーとして資本参加。2005年12月にトヨタ自動車へ売却
2002年2月 ヴァージン・シネマズ・ジャパン(現TOHOシネマズ) シネマコンプレックスの運営 完了 経営管理支援として資本参加。2003年4月に東宝へ売却

※アント・キャピタル・パートナーズ「投資実績」を基に作成

家賃保証サービスのCasaは2017年10月に東証2部に上場。土産物の企画・製造を行う藤二誠は2014年3月に全日空商事に譲渡。アントステラは2008年1月に森永製菓に譲渡。中古車オークションのシーエーエーはトヨタ自動車<7203>に譲渡するなど、エグジットも着実にこなしています。

IPOにも耐え得る筋肉質な経営体制とは?

アント・キャピタルは投資先に対して、明確なルールに基づいた経営支援を行っています。現場や経営者に寄り添うハンズオン型の支援にこだわり、「見える化」、「考える化」、「実行する化」の3つのポイントを3年ほどかけて実施することにより、経営体制の改善を行っていることが特徴です。

特にKPI(重要業績評価指標)を活用した経営管理を徹底し、当月の分析や振り返りを実施した上で、翌月のアクションプランを策定します。部門やセグメントごとの管理部会計を徹底し、管理単位を細分化することによってコスト管理の見直しや再構築を行います。KPIを詳細までモニタリングすることで、経営課題を浮かび上がらせるのです。

アント・キャピタルが少人数化を徹底し、企業規模を抑えているのは、こうした支援体制を崩さないためです。

シュークリームの「ビアードパパ」を買収したのが、2006年8月でした。2008年2月期の純損失は2200万円。永谷園ホールディングに売却したのは2013年11月です。2013年2月期は3億2500万円の純利益が出ています。アント・キャピタルが買収して立て直しを図った様子がわかります。

麦の穂ホールディングスの2013年2月期の純資産は36億6100万円、営業利益は6億4800万円でした。永谷園はこの会社を94億4000万円で買収しています。永谷園はそれまでに製麺会社などの買収は行っていましたが、異業種の買収は初めて。加工食品だけに留まれば市場が縮まることに危機感を抱いた同社が、100億円もの大型買収に踏み切ったのです。

2019年5月には「永谷園のお茶づけ」×「ビアードパパのシュークリーム」を限定販売しています。これは、エイプリールフールの「ネタ」としてSNSで話題になったものを、実際に商品化したもの。世間を驚かせるような商品企画ができるもの、買収によるシナジー効果の一つといえるのかもしれません。

麦とホップ@ビールを飲む理由