星野リゾート(軽井沢町)とNECキャピタルソリューション<8793>の子会社リサ・パートナーズ(東京都港区)が、国内のホテル・旅館を投資対象とした200億円規模の「ホテル旅館ファンド」を立ち上げます。

観光庁の「主要旅行業者の旅行取扱状況」によると、2020年5月の国内旅行取扱額は81億7200万円(前年同月比96.6%減)。新型コロナウイルスで、観光地を中心とした地方のホテル・旅館は壊滅的な打撃を受けています。

新たに立ち上げるホテル旅館ファンドは、この難局に直面した全国のホテル旅館の事業承継支援、事業譲渡支援、特別目的会社などを活用した資金調達手段の提供を行います。

星野リゾートの代表・星野佳路氏はかつてゴールドマン・サックス(ニューヨーク州)とタッグを組んで全国の旅館の再生を手掛け、星野リゾート・リート<3287>を上場へと導きました。星野リゾート・リートとホテル旅館ファンドの違いはどこにあるのでしょうか。また、新型コロナウイルスで先行き不透明なこの時期にファンドを立ち上げた狙いはどこにあるのでしょうか。

この記事では以下の情報が得られます。

・星野リゾートの経営手法
・ホテル旅館ファンドの狙い
・ファンドの概要

債券回収×旅館経営の集大成となった星野リゾート

リゾナーレ熱海
リゾナーレ熱海(画像は決算説明資料より)

新しく立ち上げたファンドの解説の前に、星野リゾートについて説明します。

「星のや」「界」「リゾナーレ」の運営で知られる星野リゾートは、斜陽産業だった旅館のブランディングに成功した、観光産業の旗手として知られています。しかし、星野リゾートが単なる宿泊施設の運営会社と大きく異なるのは、業績の悪化した施設を安く買い取り、再生して価値を上げる再生ファンドの仕組みを取り入れたことです。

代表の星野佳路氏は慶應義塾大学経済学部卒業後、ホテル経営学で全米トップといわれるコーネル大学の修士課程に進学。現在のJALホテルズに入社しました。シカゴでのホテル開業業務に携わった後、家業の星野温泉(軽井沢町)に副社長として入社します。

そのわずか6か月後に退社し、再び渡米。シティバンク(ニューヨーク州)に入社。リゾート企業の債権回収業務に携わりました。このときの経験が後に発揮されることになります。

1991年にふたたび星野温泉に入社し、社長に就任しました。星野リゾートに社名を変更し、自社が持つ「ホテルブレストンコート」の業績を、婚礼を軸に急回復させて大成功をおさめます。

2001年から「リゾナーレ(現:リゾナーレ八ヶ岳)」(山梨県北杜市)、「アルファリゾート・トマム(現:星野リゾートトマム)」(北海道勇払郡)などの経営破綻した大型の宿泊施設の再生に着手。2005年からゴールドマン・サックスと提携し、「白銀屋(現:星野リゾート 界 加賀)」(石川県加賀市)や「湯の宿 いづみ荘(現:星野リゾート 界 伊東)」(静岡県伊東市)など業績悪化が著しい旅館の再生案件も手掛けるようになりました。

2013年7月には星野リゾートが運営する物件への投資・保有をする100%子会社の星野リゾート・リートを上場させました。星野リゾートは再生した物件をリートに売却し、迅速に資金が調達できるようになりました。また、物件をオフバランス化することにより、星野リゾートの財務の健全化を図り、施設運用に集中できる体制を整えたのです。