ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、東京都千代田区)がまとめた2020年(1~12月)のベンチャーキャピタル(VC)による国内向け投資額は前年を30%下回る1512億円(四半期の調査結果を単純集計)となり、7年ぶりに減少した。投資件数は前年比19%減の1160件で、2013年に現行方式での調査開始以来初めてマイナスとなった。新型コロナウイルス感染拡大がベンチャー投資の盛り上がりに冷や水を浴びせた格好だ。
VECは四半期ごとに国内VC(事業会社によるコーポレートベンチャーキャピタルを含む)による投資動向調査を集計している。今回の第4四半期(2020年10~12月)調査には105社が回答した。
10~12月の国内向け投資額は437億8000万円で、前年同期比22%減った。件数は同19%減の291件だった。金額、件数はそろって2020年1~3月(第1四半期)から4四半期連続で前年を下回った。この結果、年間の国内向け投資額は2019年に初めて乗せた2000億円台を大きく割り込んだ。
10~12月期の国内投資額を業種別にみると、「コンピューター及び関連機器、ITサービス」が37.9%でトップ。以下、「通信・ネットワーキング及び関連機器」12.8%、「バイオ、製薬」12.5%、「メディア、娯楽、小売、消費財」10.6%、「工業、エネルギー、その他産業」8.1%、「ソフトウエア」6.1%が続いた。
対象企業のステージ別の投資動向(金額)では、設立後経営が軌道に乗り始める段階にあたる「アーリー」が47.6%を占め、前年同期を約8ポイント上回った。事業の拡張期にあたる「エクスパンション」も28.2%と前年同期から割合を約10ポイント伸ばした。
10~12月に新規設立されたファンドは6本、1618億円で、本数は少ないものの、金額は調査開始以来最高となった。これにより、2020年の新規設立ファンドは54本(前年比7本増)、ファンド総額は4581億円(同1008億円増、既存ファンドへの追加出資含む)。潤沢なマネーが投資先を求めて積み上がっている。
◎国内向け投資の推移(VECまとめ)
年 | 投資額 | 投資件数 |
2013 | 660億円 | 680件 |
2014 | 646億円 | 732件 |
2015 | 738億円 | 845件 |
2016 | 950億円 | 1067件 |
2017 | 1257億円 | 1145件 |
2018 | 1358億円 | 1283件 |
2019 | 2162億円 | 1432件 |
2020 | 1512億円 | 1160件 |
文:M&A Online編集部
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