結婚式を延期している企業はテイクアンドギヴ・ニーズだけではありません。2020年1月~3月までで婚礼部門が前年同期比4億5000万円の減収になった藤田観光<9722>、900組以上の結婚式を秋以降に延期したブラス<2424>など多くの専門式場運営会社が延期措置をとっています。また、国内・海外ブランドを問わず多くのホテルも同様です。

ウエディング企業の多角化は加速するか

TKP決算説明資料
リージャスを買収するなど規模拡大を進めていたTKPと結婚式場を有効活用したいエスクリの利害が一致(画像はTKPの決算説明資料より)

新型コロナウイルスの危機感を鋭く感じ取って、新たな道を模索しているのがエスクリ。ビルイン型の結婚式場などを全国に34施設展開している企業です。2020年3月期の売上高は前期比5.6%減の314億3000万円、営業利益は29.4%減の15億4600万円となりました。エスクリも3月に予定されていた結婚式1000組のうち、400組を延期としています。運転資金を確保するため、金融機関から28億円の借り入れもしました。

エスクリは7月に入って矢継ぎ早に資本業務提携を進めました。その一つが7月16日に発表した貸会議室のTKP。エスクリの筆頭株主であり、創業者岩本博氏の資産管理会社であるブロックス(東京都中央区)が保有する株式170万株を334.4円で売却。売却額は5億6800万円です。これにより、TKPはエスクリ株を14.52%保有する主要株主となります。

エスクリはこの提携により、運営している結婚式場を平日会議室として開放。施設の稼働率を上げる新たなビジネスに本格参入するのです。エスクリが運営する結婚式場は、ターミナル駅から近い駅ビルなどの上層階が多くなっています。借りる側の企業からすれば、利便性の高い物件が多いです。駅から離れたプライベート感溢れる邸宅風ゲストハウスではなく、ビルイン型を推し進めていたエスクリならではの発想です。

時を同じくして、SBIホールディングスに第三者割当増資をすることも決めました。180万株を334.4円で新規発行し、6億円を調達します。この増資を実施すると、TKPの保有比率が12.59%まで下がり、SBIホールディングスが13.33%の株式を保有する筆頭株主となります。

この提携の狙いは、SBIの金融サービスによって婚礼客を生涯顧客化することにあります。人生の転機となる婚礼を軸として、金融商品や保険、ローンなどの販売へと結びつけるのです。

今回の資本提携を機に創業者・岩本博氏は代表権のない取締役会長へと退きました。岩本氏は結婚情報誌「ゼクシィ」の立ち上げに携わり、営業のトップに上り詰めた人物。その後、現在のビルインタイプの結婚式場に目をつけて起業しました。婚礼業界を知り尽くした岩本氏が第一線から離れたことは、婚礼業界がビジネスモデルの転換を迫られている象徴的な出来事のように見えます。

日本の婚姻組数は2008年の72万6106組を境に年々減少しています。ブライダル総研によると2018年は58万6481組。2030年には52万7550組まで減少する予測となっています。その中で結婚式を挙げるカップルは半分ほど。新型コロナウイルスはその危機感に火をつけました。今後、披露宴をしないカップルや少人数で済ますケースは増加すると考えられます。

婚礼業界は長らく少子化でジリ貧になるといわれていました。そのため、婚礼客の生涯顧客化や結婚式場の平日の転用が必要との議論も古くからされていました。しかしながら、婚礼単価が高く、現金商売で利益率も高かったため、目先の婚礼客獲得にだけ注力する状況が続いていたのです。幸か不幸か、新型コロナウイルスがビジネスモデルを転換する機会をもたらしたようにも見えます。

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