新型肺炎が、インバウンド景気にも本格的な影を落とし始めました。中国政府が、すべての海外団体旅行を中止するよう通告したのです。これにより、1月27日から日本を含むすべての国への団体旅行が取りやめとなりました。

日本政府観光局によると、2019年2月の中国人観光客は72万人。30~40%が団体客と見られます。少なく見ても、今年2月はおよそ20万人の減少が見込まれます。

訪日外国人は日韓関係の悪化により、およそ40万人減少しました。中国と韓国のダブルパンチで、2月の訪日外国人は2019年比で60万人ほど少なくなる計算です。打撃を受けるのがホテル業界。すでに韓国観光客減少の影響を受けたホテルは、新型肺炎に追い打ちをかけられることになります。

この記事では以下の情報が得られます。

・日韓関係の悪化がホテルの客室稼働率に与えた影響
・ホテル系リートが立たされている苦境

死者100人以上で中国が異例の措置

中国の新型肺炎で死亡した人が100人を超えました。感染者は4,500人を上回っています。北京では地下鉄でのマスク着用が義務付けられたり、世界遺産ポタラ宮などの主要な観光施設が営業停止に追い込まれています。武漢は現地を離れる航空便や鉄道を一時停止し、事実上街は封鎖されています。

27日に中国政府は海外への団体旅行をすべて中止するとの通達を出しました。同時に2020年1月24日以前に航空券を購入した観光客がキャンセルした場合、すべての航空会社や代理店に対して、キャンセル手数料を徴収してはならないとも命じています。国内の観光客数に深刻なダメージを与えることは間違いありません。

日韓関係の悪化で観光客数の伸びは鈍化

画像はイメージ(Photo by PAKUTASO)

訪日外国人は2019年8月を境に勢いを失っていました。2019年7月の訪日外国人は299万1000人で前年比5.6%増。しかし8月になると252万人で前年比2.2%減となります。その要因は明確。韓国人観光客が前年比で48%も減少したのです。徴用工などを巡る問題で対立が激化、観光客の減少に繋がりました。その流れは今も続いており、2019年12月の観光客数全体は前年比4.0%減の252万6000人となりました。この月の韓国人観光客は64%も減少しています。

日韓関係の悪化が鮮明になる前の月間韓国人観光客数は60万人前後でした。9月以降はおよそ20万人まで減少しています。さらに中国人観光客が20万人ほど少なくなる見込みです。2019年2月の訪日外国人は260万人でした。このままの状態が続けば、200万人まで縮小することとなります。

ホテル業界へのダメージは計り知れないほど大きいものとなります。一部のシティホテル、リゾートホテル、ビジネスホテルはすでに大打撃を受けているからです。

「ネストホテル」や「スマイルホテル」など、国内で19のビジネスホテルを所有するいちごホテルリート<3463>は、2019年8月~12月の売上高が前年比で10.5%減の35億9500万円となりました。客室稼働率は87.6%から82.9%と5.1%も減少しています。

打撃が大きかったのが、近年人気の観光スポット大阪。「チサンイン大阪ほんまち」の12月の売上高は前年比39.8%減の1500万円、ネストホテル大阪心斎橋は同33.8%減の5700万円となりました。

▼いちごホテルリート実績(百万円)


1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
売上高
621.9 713.9 759.6 803.1 819.8 739.3 791.6 852.6 687.4 749.5 752.9 639.7
前年比 2.4%減 4.0%減 3.9%減 0.1%増 0.2%増 3.7%減 9.2%減 10.6%減 9.3%減 9.7%減 8.1%減 14.8%減

ホテル運営状況のお知らせより筆者作成

いちごホテルリートは8月に2桁減となり、12月に減少幅を広げました。中規模で宿泊料金の安いビジネスホテルは、アジア人観光客の宿泊が多く、打撃を受けやすいものと見られます。

大江戸温泉リートは今期経常利益5%減を予想

星のや京都空中茶室
星のや京都空中茶室(画像は決算説明資料より)

1月31日に「ソルヴィータホテル那覇」を38億6000万円で買収する星野リゾート・リート<3287>はどうでしょうか。

同社は旅館、リゾートホテル、都市型シティホテル、ビジネスホテルと資産を分散しています。

「星のや京都」の2019年の実績は、客室稼働率が2.1%増の94.1%、売上高は1.2%増の11億6400万円でした。「リゾナーレ八ヶ岳」は客室稼働率が4.8%増の85.9%、1.6%減の47億2200万円と旗艦店は好調です。シティホテルの「ハイアットリージェンシー大阪」は客室稼働率が3.4%減の70.6%、売上高が1%減の42億1500万円と微減。カジュアルホテルの「アンドルームス大阪本町」の客室稼働率が7.1%減の80.9%、売上高が22%減となりました。

アンドルームスは2019年8月まで客室稼働率80%を維持していましたが、9月に70%まで10ポイントも落としました。少なからずダメージを受けていますが、分散投資効果でカバーしている状態です。しかし、訪日外国人をターゲットとしたブランド「OMO」など、ホテル単体への影響は今後大きくなるものと予想できます。

温泉特化型の大江戸温泉リート<3472>は、2020年5月期の営業収益が0.9%減の14億2700万円、経常利益が4.8%減の5億3900万円と予想しました。同社が保有するホテルも観光客離れが鮮明。2019年12月全体の客室稼働率は前年比5.8%減の84.7%、売上高は7.2%減の14億6100万円でした。

▼大江戸温泉リート実績(百万円)

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
売上高
1,306 1,186 1,548 1,354 1,379 1,173 1,356 2,101 1,217 1,266 1,477 1,461
前年比 2.0%増 1.3%増 2.2%減 2.2%増 1.8%増 1.4%減 3.9%増 0.8%増 3.4%減 13.0%減 4.6%減 7.2%減

月次開示に関するお知らせより筆者作成

やはり、9月から減少に転じ、その幅は拡大しています。大江戸温泉は観光客減少に歯止めがかからないことを考慮して、今回減益予想を出しました。新型肺炎による影響で更なる減益を強いられる可能性もあります。

シティホテルが主体のジャパン・ホテル・リート<8985>は、2019年12月期の運用状況の予想修正を発表。従来の286億6600万円から1.4%減の282億7400万円としました。修正の理由として、韓国人観光客の減少を挙げています。

中国で猛威をふるうコロナウィルスの脅威が、別の形で日本のホテルに打撃を与えることなりました。オリンピック景気に沸くホテル業界ですが、その直前で思わぬ苦境に見舞われることとなりました。ホテル業界全体にとって頭の痛い問題となりそうです。

麦とホップ@ビールを飲む理由