旅行会社大手のエイチ・アイ・エ ス(HIS)<9603>が苦境に陥っている。2020年6月19日に、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を理由に、2020年10月期第2四半期の業績予想を下方修正し、赤字に転落する見通しを明らかにした。

通期の業績予想については新型コロナウイルスの影響を精査中とし公表を避けたものの、新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波が予想されており、当初の見込みを下回るのは避けられない見通しだ。

HISは2017年に中国、台湾、カナダのツアーオペレーター会社やホテル運営会社など3社を買収し業容を拡大してきた。2019年には不成立に終わったもののホテル事業で提携を進めることなどを狙いに、不動産・ホテル業のユニゾホールディングスにTOB株式公開買い付け)を仕かけた。

新型コロナウイルスによって事業環境が急変する中、買収を中心としたこれまでの積極的なM&A戦略は変更を迫られることになりそうだ。

買収から売却へ

HISは2020年10月期第2四半期の売上高を当初の3750億円から3443億円に307億円引き下げた。営業損益は24億円の黒字から14億7000万円の赤字に、経常損益は35億円の黒字から7億6000万円の赤字に、四半期損益は8億円の黒字から34億6000万円の赤字にそれぞれ修正した。 

世界各国で入国制限が強化され空路が大幅な減便となったのに加え、運営を手がけているテーマパーク・ハウステンボスが休園を余儀なくされたことなどが足を引っ張った。 

HISは2017年に企業買収を活発化し、中国のツアーオペレーター会社Group MIKI Holdings Limited、台湾のホテル運営会社Green World Hotels、カナダのツアーオペレーター会社Jonview Canadaの3社を子会社化した。 

Group MIKI Holdingsは傘下に29社の事業会社を抱える持ち株会社で、Green World Hotelsは台湾の大手ホテル、Jonview Canadaは世界中の旅行業向けの商品やサービスを多数提供しており、いずれも事業拡大に向けてのシナジーが得られると判断した。 

新型コロナウイルスの影響で業績が悪化する企業は後を絶たず、帝国データバンクの調査では、6月17日までに業績を下方修正した上場企業は800社を突破し、下方修正した売上高の合計は5兆3000億円に達した。 

これら企業が財務内容改善のために、保有する子会社株式の売却に前向きになるのは想像に難くなく、HISについても今後、買収から売却にM&A戦略を変更する可能性は低くはなさそうだ。

文:M&A Online編集部