西武ホールディングス<9024>の子会社プリンスホテルが、ロンドンの高級ホテル「ジ・アーチ ロンドン」を買収しました。11月12日の取得後、2019年夏以降にプリンスホテルの最高級ブランド「The Prince AKATOKI」としてリニューアルオープンします。買収を含めた投資総額は87億円(日経新聞より)。プリンスホテルは、2017年にオーストラリアのStayWell Hospitality Group(以下:ステイウェル)を43億円で買収。海外戦略の布石を打っていました。

「AKATOKI」は2店舗目として、2019年冬に中国・広州への出店が決定。バイオメディカル産業のハブ都市にホテルを展開し、ビジネスシーンで存在感を発揮します。

好調な国内ホテル事業に後押しされ、プリンスは世界ブランドとして飛び立つ日がやってきました。

この記事は以下の情報が得られます。

  • ①プリンスホテル世界戦略の内容
  • ②ホテル事業の業績

                                 

ジ・アーチ ロンドン
人気の高級ホテル「ジ・アーチ ロンドン」

実は世界で2番目に観光客が多い都市ロンドン

プリンスホテルが、ロンドンのホテルを買収したことに海外戦略の本気度を窺い知ることができます。

これまで、日本の海外進出はリゾートホテルが主流。オークラのハワイ、グアム、パラオ、バリ。星野リゾートのタヒチ。HISのオーストラリア・ゴールドコーストなどです。こうしたホテルは、日本人観光客を取り込む目的でオープンしたものでした。

日本のホテルは世界的な知名度が低く、マリオットやIHG、ヒルトンなどの巨大チェーンに押されて、主要都市では集客しづらいという問題点がありました。

プリンスホテルも出店エリアはハワイや台湾など、日本人が集まりやすい場所が中心。世界を相手に戦う土壌は整っていませんでした。

風向きを変えたのが、豪ホテルチェーン、ステイウェルの買収。このときのキャッチフレーズが印象的です。それがこちら。

プリンスホテル

国内最高級ブランド「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」をオープンしたプリンスが、いよいよ世界へ踏み出す意気込みに溢れています。

ステイウェルは2006年にシドニーを拠点にして立ち上げたホテルチェーン。ホテルブランドはハイクラスの「パークレジス」と、ミドルクラスの「レジャーイン」です。

ステイウェルは6ヵ国に18ホテルを展開しています。

国名出店都市名
オーストラリア・ブリスベン
・メルボルン
インド
・デリー
中国・北京
・上海
シンガポール・シンガポール
アラブ首長国連邦・ドバイ
イギリス・ロンドン

デリー、ドバイ、メルボルンなどの主要都市にホテルを構えています。ステイウェルの会員数は全国で3万人。西武グループの会員数が88万人で合計93万人。大台の100万人に近づきました。

とはいえ、マリオットグループの会員は1億人を超えています(森トラストより)。この数字の絶望感は、漫画『ドラゴンボール』でフリーザが言った「私の戦闘力は53万です」というセリフを彷彿とさせます。そのとき、主人公の孫悟空の戦闘力は6万ほどでした。とても太刀打ちできないと、読者の少年たちは震えたものです。

ところが、プリンスホテルは世界攻略に更なる一手を打って出たのです。それが「ジ・アーチ ロンドン」の買収です。ロンドンのホテルを買収した理由は2つあると考えられます。

  • ①ステイウェルの事業拠点があり、ネットワークが活用できた
  • ②ロンドンは世界2位の観光都市で世界中の観光客が集まる

                       

マスターカードの調査によると、世界渡航先ランキングでロンドンは第2位。1位のバンコクに次いで、人気の観光都市となっています。年間およそ1,980万人が訪れます。ロンドンは2012年のオリンピックが終わった後も人気都市として君臨。2014年、2015年は同調査でランキング1位を獲得しています。

今回買収した「ジ・アーチ ロンドン」は客室数82で収益性は低いです。ポイントはホテルのファンが多いこと。館内にはイギリスで活躍するアーティストの作品が飾られ、ホテル好きのオーナーのきめ細やかなサービスが行き届いています。ショッピング街へのアクセス性も高く、レストランは地元の人々にも愛されています。プリンスホテルはここを呼び水にして、世界中の宿泊客を会員に引き込もうとしています。

プリンスの海外戦略は、もはや日本人観光客を狙ってはいません。