日韓関係の急速な冷え込みで韓国からの観光客数減少に歯止めがかかりません。JNTO(日本政府観光局)によると、2019年10月の韓国人観光客は前年同月比で65%減の19万7000人となりました。韓国からの渡航者数は、日韓関係の悪化が鮮明になった2019年8月から激減。7月は7.6%の減少に留まりましたが、8月は48%減、9月は58.1%減と減少幅が急拡大しています。インバウンド全体に与える影響も大きく、10月の訪日外国人は5.5%減の249万人で250万人を割り込みました。

その衝撃をもろに受けているのがホテル業界。シティホテルが中心のジャパン・ホテル・リート<8985>10月の客室稼働率は前年同月比2.5%減、低価格ホテルを保有するいちごホテルリート<3463>は5.5%減となっています。オリンピック開催で一時は過熱気味だったホテル系リートの株価にも影響が出始めました。日韓関係の悪化がサービス業にも波紋を広げています。

この記事では以下の情報が得られます。

・ホテル系リートの状況
・リート銘柄の投資判断をする重要指標
・韓国人観光客減少の実態

8月に今年初めて昨年割れを起こした訪日外国人

ホテルや飲食店が期待をかけるインバウンドですが、2019年8月に2.2%減で今年初めて減少に転じました(グラフのオレンジが2018年、青が2019年)。9月はラグビーワールドカップ開催で5.2%増加していますが、10月はラグビーの好影響を受けながらも5.5%減となっています。


▼訪日外国人の推移 ※訪日外客統計より筆者作成 

訪日外国人 2018年 2019年 増減    
1月 2,501,409     2,689,339     7.5%
2月 2,509,297     2,604,322     3.8%
3月 2,607,956     2,760,136     5.8%
4月 2,900,718     2,926,685     0.9%
5月 2,675,052     2,773,091     3.7%
6月 2,704,631     2,880,041     6.5%
7月 2,832,040     2,991,189     5.6%
8月 2,578,021     2,520,134     -2.2%
9月 2,159,595     2,272,900     5.2%
10月 2,640,610    2,496,600    -5.5%

背景には韓国人観光客の日本離れがあります(グラフのオレンジが2018年、青が2019年)。2018年は59万人だった8月の韓国人観光客は31万人に。10月は57万人が20万人にまで減りました。貿易や軍事協定問題にまで発展した慰安婦、徴用工問題を巡る日韓関係の冷え込みが、観光客数の急減を引き起こしたのです。8月は韓国側からGSOMIA破棄の発言があったタイミングです。


▼訪日韓国人の推移 ※訪日外客統計より筆者作成 

訪日韓国人 2018年 2019年 増減
1月 803,816 779,383 -3.0%
2月 708,318 715,804 1.1%
3月 619,196 585,586 -5.4%
4月 638,523 566,624 -11.3%
5月 640,355 603,394 -5.8%
6月 606,162 611,867 0.9%
7月 607,953 561,675 -7.6%
8月 593,941 308,730 -48.0%
9月 479,733 201,200 -58.1%
10月 571,176 197,300 -65.5%

一方、韓中関係の改善は鮮明になっており、韓国人の渡航先として中国を選ぶケースが増加しています。また、韓国経済は低迷気味で物価の安いベトナムなどが人気となっています。

8月から客室稼働率5%減が続くいちごホテルリート

観光客
画像はイメージ(Photo by PAKUTASO)

外国人観光客の減少が、ホテルの客室稼働率に影を落としています。ジャパン・ホテル・リートは8月に前年対比で2%のマイナス、9月はラグビー効果で戻しましたが、10月は2.5%マイナスとなりました。

低価格ホテルを多数保有する、いちごホテルリートの稼働率の落ち込みは深刻です。韓国人観光客が激減した8月に5%の減少となり、9月・10月も5%という大幅な減少が継続しています。

▼ジャパン・ホテル・リートの稼働率推移 月次報告書をもとに筆者作成

2019年  稼働率 前年同月比
1月 81.1%0.2%
2月 86.3%-3.5%  
3月 87.4%-2.4%
4月 89.0%-0.5%
5月 87.5%0.1%
6月 88.1%1.0%
7月 87.3%-0.7%
8月 88.6%-2.1%
9月 84.6% 2.4%
10月 86.6%-2.5%

▼いちごホテルリートの稼働率推移 月次報告書をもとに筆者作成

2019年 稼働率 前年同月比
1月 82.7%0.1%
2月 90.1%-0.5%
3月 91.0%-0.6%
4月 90.4%0.0%
5月 86.4%-2.5%
6月 87.7%-0.5%
7月 87.0%-3.6%
8月 89.1%-5.1%
9月 83.4%-5.0%
10月 85.3%-5.5%

インバウンドの減退は、J-REITのホテル銘柄全体にも波及しています。

不動産ファンドのリート系銘柄は、通常の株式と違いNAV倍率と分配金利回りで割安性などの投資判断を行います。この指標に変化が表れているのです。

NAV倍率とは、「純資産価値(Net Asset Value)」です。リートの株価(投資口価格)が純資産価格(資産から負債を引いたもの)の何倍かを示すものです。株価純資産倍率(PBR)に極めて近いものです。PBRは、10倍以上の数字になることがあります。これは投資家が企業に将来性や期待感を抱いているためです。潜在能力や伸びしろとも言えます。

しかし、不動産の場合は売上や利益が激増することはほとんどありません。従って、NAVは1.0を適正値として、̟̟プラスマイナス0.25くらいの幅で動くケースがほとんどです。裏を返せば、1.0より安ければ割安、高ければ割高となります。

現在、リート銘柄全体のNAV倍率は1.2です。その一方で、ホテル系リート(ジャパン・ホテル・リート、いちごホテルリート、星野リゾート・リート<3287>、大江戸温泉リート<3472>、森トラスト・ホテルリート<3478>)のNAV倍率は1.0。オリンピックで観光客数の増加が期待されているにも関わらず、適正水準に収まっています。

分配金利回りでみるとリート全体が4.0%で、ホテル系銘柄の平均は4.9%。全体に比べておよそ1%高くなっています。

インカムゲインが基本のリートは、分配金を株価で割った分配金利回りを重視します。分配金が高いということは、株価が安いということ。市場からの評価が低いことを意味しています。

韓国人観光客の減少は、今後も続くものと予想されます。インバウンドに期待していたホテルや飲食店は、その影響をしばらく受けそうです。

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