M&A案件としてはジャパンフリトレーを除くと、目立つような事例はなく、件数も限られる。2006年にはコンビニ用菓子パン製造のタワーベーカリー(埼玉県越谷市)の株式80%を取得して子会社した。最近では2014年、水産加工品、農産加工品製造のカルビー食品(広島県廿日市市)を吸収合併している。
「カルビーにとって最大のM&Aは松本氏を招聘したことだ」。松本晃氏は2009年にカルビーの会長兼CEOに就任したが、元々、伊藤忠商事出身で、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の経営トップを15年間務め、前年から社外取締役に就いていた。いわゆる“プロ経営者”の起用は、ヒト版のM&Aというわけだ。社長には生え抜きの伊藤秀二氏が就任し、経営から創業家は離れることになった。
松本氏がまず主導したのがペプシコとの戦略的な資本・業務提携であり、株式上場(2011年3月、東証1部に上場)に向けた体制整備だった。
カルビーは1949年、広島市で松尾糧食工業として設立した。現社名のカルビーは、戦後の日本人の不足していたカルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」に由来する。1964年、瀬戸内海の小海老を原料とする「かっぱえびせん」が大ヒットし、全国区の企業に躍進。1973年に東京に本社を移した。
業容拡大が続いてきたが、2000年代に入ると少子・高齢化の進展や長引くデフレなどで停滞感が見え始めていた。そうした中、海外事業の推進など新たな成長戦略を託されたのが松本氏だった。
2009年3月期と直近の2017年3月期を比べてみよう。売上高は2倍近く伸び、このうち海外分は5倍に拡大した。この間、ポテトチップスのシェアは57%から72%に高まり、シリアル食品「フルグラ」は20数億円から300億円規模と経営の柱に成長した。「フルグラ」は麦を原料にドライフルーツを加え、コーンとは異なる食感が支持を集めており、シリアル食品で4割程度の高シェアを持つ。
松本会長(70)と伊藤社長(60)のコンビ誕生から9年、一貫して成長路線を堅持してきた。世界で戦える企業、世界で伸びる企業を目指すうえでは、これまで手控えてきた感のあるM&Aも視野に入ってこよう。
〇株主構成(2017年9月末現在)
株主 | 保有株式千株 | 保有割合% | |
---|---|---|---|
1 | FRITO-LAY GLOBAL INVESTMENTS B | 26,800 | 20.02 |
2 | (社)幹の会 | 22,890 | 17.1 |
3 | ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー | 5,402 | 4.04 |
4 | 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) | 2,856 | 2.13 |
5 | 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 2,588 | 1.93 |
6 | カルビー従業員持株会 | 2,412 | 1.8 |
7 | 鳥越製粉(株) | 1,936 | 1.45 |
8 | The Bank of New York Mellon SA | 1,936 | 1.45 |
9 | 資産管理サービス信託銀行(証券投資信託口) | 1,801 | 1.35 |
10 | 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口5) | 1,725 | 1.29 |
- | その他 | 63,520 | 47.44 |
合計 | 133,866 | 100 |
文:M&A Online編集部
この記事は企業の有価証券報告書などの開示資料、また各種報道などを基に、専門家の見解によってまとめています。
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。