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【ブリヂストン】米国で2度の大型M&A 苦難乗り越え高収益体質を構築

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陳列されたタイヤ

【M&A戦略・財務分析】米社買収で海外事業拡大

ブリヂストンの沿革と主なM&A
年     概要
1906年 創業者の石橋正二郎、前身の仕立物業「志まや」を引き継ぐ
1930年 日本足袋株式会社(にほんたび。現在の株式会社アサヒコーポレーション)のタイヤ部門として発足
1951年 米国のグッドイヤー社と技術提携を締結
1983年 米国ファイアストン社のナッシュビル工場を買収。北米に初の生産拠点を確保
1988年 米国第2位のタイヤメーカー ファイアストン社を3300億円で買収
1989年 北米の子会社を再編、「ブリヂストン/ファイアストン・インク」を設立
1990年 欧州統括会社「ブリヂストン/ファイアストン・ヨーロッパエスエー」を設立
1993年 スポーツ事業をブリヂストンスポーツに統合
1999年 ブリヂストンメタルファを吸収合併
旭カーボンを子会社化
2006年 ブリヂストン米国子会社、米国再生タイヤ(リトレッドタイヤ)会社のバンダグ社を1200億円で買収
2008年 東洋ゴム工業と業務・資本提携に関する基本合意書を締結
2010年 連結子会社のコンサルティング会社であるMBエンタープライズ(日本)を買収
2014年 米国子会社のブリヂストン・ホース・アメリカ・インクが、米国のホース販売・サービス専門会社Masthead Industries(マストヘッドインダストリーズ社)を買収
2015年 米国子会社のブリヂストン・アメリカス・インクが米国大手自動車用品小売りチェーン ペップ ボーイズ社への買収を合意するも、カール・アイカーン氏に競り負けて買収を断念
米国子会社のブリヂストン・アメリカス・インクがカナダのタイヤコネクト システムズを買収
2016年 フランスの自動車整備やタイヤ販売会社Speedy France(スピーディ・フランス社)を買収
2017年 フランスのタイヤ小売りチェーンであるGroupe Ayme(グループ・エイメ社)を買収

①米ファイアストンを3300億円で買収(1988年)

 ブリヂストンのM&Aを語る上で当然外すことができないのは米国ファイアストン社の買収である。1980年代当時のタイヤ業界の経営環境は厳しく、日系自動車メーカーの北米進出に伴う国内新車用タイヤ需要の減少などを背景に、ブリヂストン社内でも北米への本格的な進出を望む声が高まっていた。しかし、ブリヂストンには米国系自動車メーカーへの新車用タイヤの納入実績はなく、米国での市販用タイヤ販売は好調でも、新設工場を採算ラインに乗せるだけの販売力は持っていなかった。そこでブリヂストンは北米、中南米、欧州で多くの生産設備を持っており、シナジー効果の高い米国ファイアストンを一株80ドル、約3300億円で買収した。

 しかしファイアストン買収後の経営には苦闘が多かった。当時、米国では車のサービス事業の方がタイヤ販売よりも利益率がよかったため、約1,500店の自動車サービス・タイヤ小売販売店網「マスターケア」ではサービス事業に力点が置かれていた。それでも3分の1の店舗が赤字で、業績は悪化しつつあった。

 さらにタイヤ事業のうち自動車メーカー向け営業部門は、GMから打ち切り通告があり、フォードに頼らざるを得ない状況だった。独立系ディーラーへ卸す事業も、ディーラーの小売店と「マスターケア」が競合し、ファイアストン同士で犬猿の仲の状態となっており、開発力の不足や設備の老朽化、リストラ政策など最悪の状態が続いていた。それでもブリヂストンは新製品の集中的な開発、自動車メーカーへの承認取得活動を進め、新製品の現地生産を軌道に乗せることで1992年には年間黒字化を達成した。

 ファイアストンの買収を成功させたかに見えたブリヂストンであったが2000年にまたも苦戦を強いられることになった。ファイアストンタイヤのリコール問題である。ブリヂストン米国ファイアストン社のタイヤを装着したフォードの多目的車エクスプローラーの事故が多発している問題でリコールを行った。この影響で米州事業は低迷。製品自主回収関連損失を計2,031億円計上、当期純利益も前年比2%減少となった。

 この事件を持ってファイアストンの買収は失敗だったという意見もあるが、その後の売上高推移を見ていってみるとそうとは言い切れない。確かに、事件の影響で翌年2001年の営業利益は連結で約500億円減少しているが、2002年からは再び売上高、売上高純利益率は上昇傾向に戻り、売上高営業利益率も元の水準に回復した。

(グラフの金額単位は億円)

 さらに米州と国内の売上高の推移を比較してみると、2001年以降は米州での売上高が国内を上回っており、上昇を続けている。リコール等の問題はあったもののファイアストン買収は結果として成功と言えるのではないだろうか。