5.課徴金は課されるのか

金商法では、金融庁の裁量で課徴金を課す制度があります。

課徴金制度は行政処分の一つで、刑事罰を科すまでには至らない事件について、罰金で対応するという趣旨で導入された制度です。課徴金は行政当局(この場合は金融庁)の裁量で課されます。課徴金は会社に課され、役員等に課されるものではありません。

オリンパスの事件では、経営者が逮捕されて刑事罰を受けており、会社には課徴金が課されています。有価証券報告書の虚偽記載によって、課徴金が課される事件は毎年5件から10件程度ありますが、経営者に刑事罰が科されるケースは稀にしかありません。日産自動車は、刑事罰の可能性があるということですから、課徴金を免れることができないと考えてもよいかもしれません。

しかし、日産自動車は、第3四半期報告書において課徴金の見積もり計上を行っていないようです。課徴金が課される場合には、まず証券取引等監視委員会が内閣総理大臣と金融庁長官に対して「課徴金納付命令の勧告」を行い、その後金融庁で審判手続が行われたのち、金融庁から「納付命令」が出ます。東芝の場合は、2015年12月25日に課徴金の納付命令が出ましたが、東芝は課徴金が課されることを予想し、2015年3月期に見積計上しています。

日産自動車に対しては、証券取引等監視委員会から「課徴金納付命令の勧告」は今のところ出ていません。

これまでのケースでは、過年度の有価証券報告書等の訂正と課徴金がセットになっていました。日産自動車の場合には、財務諸表の過年度訂正は行われないことは確実ですので、結果として、有価証券報告書の過年度訂正は行われません。仮に、「コーポレート・ガバナンスの状況」における役員報酬だけを訂正すると、財務諸表との整合性が取れなくなってしまいます。

日産自動車の有価証券報告書虚偽記載事件は、「重要な事項の虚偽記載」であるにも関わらず、課徴金が課されないということでしょうか。金融庁の動向を見守りたいと思います。

文:久保 惠一(公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.095 2019.4.17 )より転載