ビズサプリの泉です。経理部門における役割は開示制度が大きく変わってきたここ十数年は財務会計が重視されていましたが、それが一段落して管理会計にも一定の役割を果たすことが求められているという流れがあるようです。
最近、クライアントとの業務をしていく上も、また経理業界の雑誌においても管理会計が再び注目を集めているように感じており、今回は管理会計の在り方について取り上げたいと思います。
株主、投資家、国、銀行といった会社を取り巻く利害関係者に対して、制度に基づいて報告される財務会計とは異なり、管理会計とは、英語では Management Accounting とされるように、経営をするための会計であり、その目的は経営者や管理者が意思決定をするための羅針盤となる会計情報を提供することです。
具体的には、事業への社内リソースの配分や事業からの撤退を検討するための事業の業績評価を適切に行うためであったり、より適切なインセンティブを付与する人事評価の指標とするために利用されます。
管理会計の代表的な業務としてよくいわれるのが原価計算や予算管理です。原価計算は、個々の製品についてコストがどのようにかかっているかを明らかにし、販売価格をいくらにすべきかについて有用な情報を提供するとともに、製品の原価の内訳を明確化することでコスト削減をする際に役立ちます。予算管理は、予算と実績を比較することで過去の実績の分析を行い、将来の実績見込みの精緻化を図ることが主な目的となります。
もちろん、原価計算によりコスト構造を明確化するとともに、予算管理により業績評価を行うことで予算達成を目指すということは、会社の目的である利益の最大化という点で有用ですが、原価計算と予算管理だけが管理会計ではないと考えます。
原価計算によるコスト構造の明確化については、販売価格をコストに利益を上乗せする方法で決めることよりも市場における価値、需要によって決まるということが増えてきています。また、個々の商品で黒字を確保する必要もなく、例えば、シェアをとるために赤字であっても戦略的に低価格で販売する場合もあります。このような場合、原価計算は販売価格のための意思決定に役立っているとはいえません。特に製造業以外においては、原価計算におけるコスト管理はあまり効果がなく、単なるコストを集計するだけになっている場合も多いといえます。
予算管理についても、精緻な着地見込みをつくることで、例えば投資計画や資金繰りに一定の情報をえることはできますが、「将来に向けての社内リソースの配分」については直接的に有効とはいえないのではないかと思います。
個人的には管理会計といえば、まずは費用を変動費、固定費と分解し、限界利益を明確にすることだと思います。固定費は直接費なのか、配賦される間接費なのかを区分することになります。
従来は変動費で配賦される間接費というのは考えにくいものでしたが、最近のAWSのようなサービスの登場で配賦する会社もでてきました。事業のリソース配分の決定においては、限界利益を最大化するようにしますし、事業撤退の判断には、単に商品や部門別の利益が赤字ではなく、間接費の回収ができているかを検討したうえで決定しなければ、判断を誤り赤字が大きくなる可能性もあります。
ただ、会計情報は一般的には財務会計のルールに基づき作成されるため、集計単位が勘定科目毎になっており「変動費」、「固定費」といった観点で区別して集計ができるようになっていることは実務上は少ない印象です。
近年、海外では「金融機関」がCVCを設立するという動きが見られている。金融機関がCVCを設立することの意味は何なのか。日本の金融機関の動向にも触れながら解説したい。