公開日付:2018.06.19
公認会計士・監査審査会は5月18日、中堅の監査法人アヴァンティア(TSR企業コード:297451359、千代田区)に対し、運営が著しく不当であるとして金融庁に行政処分などの措置を講じるよう勧告した。今後、金融庁による審査を経て、勧告が認められれば業務改善命令などの行政処分が下される見込みだ。
公認会計士・監査審査会の検査結果によると1.業務管理態勢、2.品質管理態勢、3.個別監査業務、のそれぞれで多数の重要な不備が認められた。監査品質を軽視し業務拡大に見合った人員や体制構築に向けた取り組みに改善がみられない、監査契約の新規受嘱に時間をかけ、品質管理業務が十分でないという。
また、個別監査業務でも期末近くの利益率の異常値を軽視し、被監査会社の事業や取引の理解を踏まえた監査リスクを評価していない事例もあるなど、著しく不十分とした。
アヴァンティアは2008年に設立。上場企業21社(うち、新興市場14社)を含め、50社前後の監査業務を手がける中堅の監査法人だ。急速にクライアント数を伸ばしたが、人員確保が伴わず業務・品質管理などに不備が生じていた。 アヴァンティアは処分勧告が出た5月18日、法人代表名で「今回の事態を厳粛に受け止め、深くお詫びする」との声明を発表した。
また、アヴァンティアは東京商工リサーチの取材に、「昨年8月に立案、推進している自主改善計画の履行を進めている途上で、引き続き努力する」とコメントした。
公認会計士・審査会による処分勧告は2017年6月、監査法人アリア(TSR企業コード:296881589、東京都港区)にも出されている。これに対し、同法人は「大多数の事実誤認に基づく、虚構の不当な文章」と反論、司法の場で明らかにするとして提訴した。それから1年以上経ったが、行政処分は下っていない。公認会計士・審査会の担当者は「アリアへの処分勧告は、現在も金融庁による審査が続いている」と話すにとどめる。
アヴァンティアに対する勧告は「現在、金融庁による審査中」(公認会計士・審査会の担当者)だが、監査法人側も全面的に指摘内容を認めており、近く行政処分が下りるとみられる。
今回の事態を受け、アヴァンティアのクライアントで監査法人の変更を表明した上場企業はない。だが、行政処分の内容によってはクライアント離れが進むことも懸念され、しばらくは目が離せない状況が続く。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月20日号に、監査先企業21社のリストを掲載予定)