ビズサプリの久保です。最近、日産自動車の有価証券報告書虚偽記載の話をあまり聞かなくなりましたので、どうなっているのか、少し検討してみました。

1.虚偽記載の経緯と内容

ゴーン元会長は、2018年11月19日と2018年12月10日の2回、有価証券報告書の虚偽記載の容疑で逮捕され、その後2度起訴されています。今年に入って、本丸と言われた会社法違反(特別背任)容疑で拘留中に再逮捕され、保釈後、同じ会社法違反(特別背任)容疑で4度目の逮捕が行われました。

日産自動車事件は、有価証券報告書における役員報酬の過少記載から始まりましたが、ゴーン元会長が、自身や第三者の利益を図って日産に損害を与えたとする特別背任罪を追及する事件に発展しています。最近、この虚偽記載に関しては報道されなくなり、あれは別件逮捕だったということで済まされそうな感があります。ここで日産自動車の有価証券報告書の虚偽記載について、振り返って検討してみたいと思います。

有価証券報告書における役員報酬の過少記載は次のとおり、8年間で約91億円とされています。
(1) 2011年3月期から2015年3月期(5事業年度)で約48億円の過少記載
(2) 2016年3月期から2018年3月期(3事業年度)で約43億円の過少記載

日産自動車の発表によると、内部通報を受けたことから、最初の逮捕前の数か月間にわたりゴーン元会長とケリー元取締役を巡る不正行為について内部調査を行ったとしています。報道によれば、日産自動車は司法取引を行って検察の捜査に協力したとされています。司法取引により、この不正に関与した役員や社員の逮捕が免れたと考えられます。この司法取引は、虚偽記載だけでなく特別背任の両方に関わるものと考えらえます。

2.証券取引等監視委員会の告発内容

有価証券報告書の虚偽記載については、検察当局による起訴のタイミングで証券取引等監視委員会が東京地方検察庁に告発しています。まず、その内容を見てみましょう。

「犯則嫌疑法人日産自動車株式会社は・・・」から始まる非常に硬い文章です。そこには犯則嫌疑者Aと犯則嫌疑者Bが出てきますが、Aはゴーン元会長、Bはケリー元取締役です。

内容を要約すると、日産自動車と主要な連結子会社からのゴーン元会長への報酬等について、有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況」の中の「役員ごとの連結報酬等の総額等」における「総報酬」と「金銭報酬」が、過少に記載されていた、と書かれています。

日産自動車の役員報酬は、金銭報酬と株価連動型インセンティブ受益権(SAR)で構成されますが、この告発文では、そのうちの金銭報酬が過少記載されていたとされています。一部の報道では、SARの方が過少記載であったとしていましたが、そうではなかったということになります。

この告発文では、過少記載額が年度毎に記載されていますが、合計額では前述の(1)と(2)と同額になります。この告発文で大事な点は、次の2つです。

・役員報酬が過少記載されていたのは「金銭報酬」だけであること
有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況」の虚偽記載についての告発であり、財務諸表の虚偽記載は告発していないこと

財務諸表の虚偽記載でないということは、この告発はいわゆる粉飾決算を追及するものではないということになります。